アンチエイジングで従業員みんなの健康を増進し、バランスの良い生活で生産性を向上。
これまで筋年齢・血管年齢・神経年齢・ホルモン年齢・骨年齢といった老化度と、免疫機能・酸化ストレス・心身ストレス・生活習慣・代謝といった老化危険因子といったアンチエイジングに関わる各項目の話をしてきました。最終回では、アンチエイジングについて職場で何が実践できるかについて考えてみたいと思います。
事業所における健康管理には多くの人が関わっています。労働衛生管理室あるいは健康管理室などの名称で呼ばれる部署は一般的には人事部に所属し、さらに産業医、健診担当医や保健士が加わります。業務の内容は労働衛生環境の整備、安全管理、労災事故の予防、健康管理、福利厚生事業であり、日常的に行われている活動は職場巡視、企業健診とその結果に基づく対応といったところでしょう。わたしは産業医が専業ではありませんが、産業医としていくつかの事業所の健康管理に関与した経験があります。そこで感じた一番のことは企業や事業所ごとの格差です。これは1カ所を重点的に管理している立場の方には分かりにくいかもしれません。
検診で指摘された異常項目への対応は企業や事業所によりまちまちです。異常を指摘された者に対し適切に指導するのは優等生。指摘されっぱなしで毎年同じ顔ぶれが指導対象となる部署、検診でひっかからなくても3カ月ごとに新規のうつ病が発生する職場もあります。ある企業では喫煙率が極めて高く会議中も煙がもくもく。酒飲み集団のような職場あり、ストレス太りが多い相撲部屋あり、ドライアイ軍団あり、腰痛チームに、胃弱組といった具合です。おそらく事業所に特有な原因と危険因子が存在するに違いありません。
人材派遣会社は様々な職種に人材を送りこんでいますが、「あそこに行くとストレスでうつ病になる人が多い」とか、「タバコの煙でまいった」とか、「セクハラが多い」という声が聞かれます。労働衛生は企業内だけの問題ではなく、もっと広い視野からとらえるべきでしょう。
わたしが関わった企業では、その検診成績を母集団データ(年齢・性別分布をそろえたもの)と比較検討するよう心掛けてきました。その結果「肥満が多い」と分かれば予算をつけて、対策を実施します。老化危険因子としては代謝の問題です。放置すると動脈硬化が促進し、血管年齢が著しく老化します。対策成果については企業の許可を得て、学会や論文で発表しました(論文:肥満症男性システムエンジニアに対するLCD療法による減量効果について。診断と治療 92巻:704-709ページ:2004年、参照)。
ある職場では母集団に比べて視力低下者が多く、しかもその数が年齢とともに増えることが分かりました。目のような神経・感覚器系の障害は、神経年齢の老化につながります。パソコンに向かう時間、照明環境などを再確認するとともに、姿勢の指導、乾燥気味であった部屋の湿度調整などドライアイ対策を実施しました。
同じ企業内でも、工場労働者、部課長、役員などそれぞれの立場によっても健康長寿を妨げる危険因子が異なることが分かります。まだ実施したことはありませんが、全国に事業所を展開している企業では、事業所ごとに危険因子を調査し、切磋琢磨してお互いがよくなるよう競い合えばいいと思います。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授