システムよりも理念ありき――ワタミのIT戦略

ITmediaエグゼクティブは、第12回ITmedia エグゼクティブフォーラムを都内で開催した。事例セッションでは、ワタミのIT戦略グループグループ長の小西淳一氏が「地球上で一番たくさんのありがとうを集めるグループになるために ワタミのコミュニケーション戦略」をテーマに講演した。

» 2010年09月24日 12時05分 公開
[ITmedia]

 ITmediaエグゼクティブは、第12回ITmedia エグゼクティブフォーラムを都内で開催した。事例セッションでは、ワタミのIT戦略グループグループ長の小西淳一氏が「地球上で一番たくさんのありがとうを集めるグループになるために ワタミのコミュニケーション戦略」をテーマに講演した。

ワタミのIT戦略グループグループ長の小西淳一氏

 IT戦略グループは、グループの経営方針に基づいたITの中長期計画の策定をミッションとしている。変化の激しい時代にITの中長期計画を立てるのは容易ではないが、IT戦略グループは経営者との距離が近いため、経営ビジョンに即したIT計画の策定が可能と小西氏は話す。

 ワタミのIT部門の業務は「業務プロセスの標準化」「オペレーションの分析」「コミュニケーションの分析」の3つが中心だ。

 「IT部門はシステム導入などで大規模なお金を使う機会が多いので、ついつい新たに大きな買い物をしたくなりますが、IT 部門の本来の仕事はこれら3つをきちんと実施し、本当に必要なものに投資すること」と小西氏は指摘する。そのために重要になるのが「理念」を全社員が常に共有することだという。

 理念とは「その企業が目指す、存在意義、活動、目標を示した普遍的なもの」と小西氏は説明する。それが「地球上で一番たくさんの『ありがとう』を集めるグループになろう」というワタミのグループのスローガンとなっている。

 ワタミが実際に取り入れたのは、ユニファイドコミュニケーションの仕組みである。ユニファイドコミュニケーションは、電話、メール、メッセンジャー、テレビ電話など、さまざまなコミュニケーション機能を備えている。

 そこで重要になるのは、利便性だけを優先するのではなく、コミュニケーションの目的によってそれらを自由に選べ、ストレスなく利用できる環境だ。例えば夜中に電話をするのは、相手とすぐにでも話をしたい緊急の用件ということ。その際にメールしか方法がないのでは困る。

 このシステムの導入プロジェクトは順調に進んだという。その要因の1つにパートナーとの良好な関係がある。自分たちが導入するものなので、当然十分な情報収集も行い事前に費用感も把握している。相見積もりをとらなければならないような関係よりも、最終的な提案をしてもらうまでに十分なパートナーシップを築き上げるほうがいいという考えだ。今回の提案を行ったシスコ、富士通とは良好な関係を築けたことになる。

 富士通は、グローバル企業でもあり、米国流の考え方も理解しつつ、日本文化のいいところを融合させていると小西氏は評価する。

 「顧客側の言いなりになるのではなく、ともに議論して正解を求めようとしてくれます。顧客側の間違いも指摘し、顧客の環境をよりよいものにすることに必死になって考えていただけるパートナーと仕事をするべきである」と小西氏は話す。ワタミは、富士通、シスコとプロジェクトを進められたことを高く社内でも高く評価している。

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