超一流企業間で、製品品質についての考え方に決定的違いがあるのを、筆者は目にした。
増岡直二郎氏による辛口連載「生き残れない経営」のバックナンバーはこちら。
超一流企業間で、製品品質についての考え方に決定的違いがあるのを、筆者は目にした。大手エレクトロニクスメーカーA社が、同B社からパソコン用ディスプレイのある機種の注文を受けることが決まった。それまでB社は対象製品を内製していたが、初めての外製である。両社間で対象製品の開発・納入打ち合わせを始めたが、納期が約1カ月どうしても合わない。両社それぞれの事情から絶対譲歩できない状況下で、開発日程を詳細に打ち合わせしていて判明したことがある。
製品試作工程が、B社の場合A社より1工程少ないのだ。A社の試作工程は原理試作から始まって、デザイン試作、製品試作、型試作、量産試作、そして量産へと入って行く。B社はほぼ同じ工程を経るが、量産試作がそもそもない。
今回の対象製品はA社製品を一部流用するので試作工程のすべてを経過しないが、それだけに、量産試作工程は不可欠である。両社関係者の打ち合わせのやり取りの一部である。
A社関係者は、業界リーダーの一角を占めるB社の品質管理についての厳密さに欠ける考えに非常に驚かされた。結局、A社は工程の省略をせずに何とか工夫をして期間短縮をし、2週間遅れで対応した。B社の品質管理体制で日ごろ何が起き、どう対応しているかは分からない。しかしこれは、品質管理についての企業の体制がしっかり確立しているかどうか、結果についての責任をどう取るかの問題である。
次に、その「企業人生命」に絡むトップの考え方についてである。
ある時A社の製品が、市場で発煙事故を発生した。担当工場が、根本策を講じる前にまず手を打ったのは、消防署とマスコミ対策だった。これが、後々工場関係者の命取りになった。結局小手先対策は効を奏すことなく、出荷済み台数すべてがリコール対象となってしまった。初期対応の稚拙さに、A社社長は激怒した。工場関係者はすべて降格・減給、しかも7年もの間、工場関係者はすべて冷遇された。「工場の体質そのものが、だめだから」が、その理由だ。余りにも執拗な処罰に一部からやりすぎという批判は出たが、しかしトップの品質に対する断固として譲れない姿勢が全社に強烈に示されている。
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明治学院大学 経済学部准教授