早稲田大学電子政府・自治体研究所は、超高齢社会におけるICTの果たす役割をテーマにしたフォーラム「超高齢化社会と情報社会の融合」を開催した。JR東日本の冨田社長は、アクティブな高齢者が充実した時間を過ごすためのインフラ作りについて語った。
65歳以上の人口が総人口に占める割合が、2007年に21%を超え、日本は「高齢社会」から「超高齢社会」となった。その中で、首都圏はもとより、東北、長野、上越、山形などの新幹線やそのほか在来線を運営しているJR東日本の果たす役割は大きい。同社は、移動手段としての鉄道だけではなく、アクティブで好奇心旺盛な高齢者のさまざまなニーズに応えるサービスの提供を目指している。
「アクティブ、アグレッシブ、好奇心旺盛で知らない場所、人と出会いたい、もっと多くを学びたい。それが当社の考える高齢者像です。そうした人たちにも満足してもらえるように、駅や周辺の街をいままでにない考え方で変えていきたい」と語るのは、JR東日本 代表取締役社長 冨田哲郎氏だ。
現在、JR東日本は駅スペース開発事業、ショッピング・オフィス事業、広告・ホテル事業など旅客以外の分野で全売上げの30%以上を稼ぐ。今後はこの比率を40%へとしていく方針だ。アクティブなシニア層、シルバー層が増えれば、それらの人たちは社会経済を担うリーダー層になる。JR東日本としても、新しい鉄道会社としてこれまでにないビジネスモデルで事業を進めていくのは自然の流れだといえる。
冨田氏は、ICTについて次のように語る。
「新しい技術は次々と出現する。しかし、その技術をビジネスにどう利用するか、簡単に答えは出てこない。その利用方法の有用性、採算性などの条件を考えつつ活用していかなければならない。"Suica"は非接触ICカードの技術を鉄道会社としてどう利用するかという観点から考え事業化した」
Suicaは現在3000万枚以上を発行している。自動券売機に抵抗のある高齢者にとっては、鉄道を利用する際のバリアを打ち破った技術ともいえる。
また、駅構内のWifi通信網の充実も進められている。インターネットをさまざまな端末で活用する高齢者が今後ますます増えることを考えれば、これも影響力の高いサービス強化だといえる。現在鉄道車内でWifi通信網が設置されているのは、NEX(成田エクスプレス)だけだが、今後は山手線などにも拡大される予定だ。
さらに、社員スタッフによる駅構内などでの案内にタブレット端末を使用している。空港などではよく見られるようになったが、鉄道の駅構内でも活用が進みつつあり、より明解で多言語にも対応できる案内が実現している。
冨田氏はICT活用を進める動きを説明しながら、次のような指摘もする。
「技術を存分に活用しながら、一方で人間でしかできない対話型のサービスを忘れないようにしている。情報社会が進めば進むほど、人間系のサービスの重要性も増す。自動券売機近くにスタッフを配置し、積極的に対話型のサービスを展開している」
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授