留学生たちと授業を受けていて明らかに違うこと。よく言われることですが、彼らはとても積極的に手を挙げ、コメントを言ったり、質問をしたりします。一方で、日本人の学生たちはなかなか手が挙がりません。
ダボス会議などにも参加し、国際競争戦略やグローバル人材の育成に携わっている石倉洋子先生の研究室に所属する予定なのですが、彼女の特別授業で、日本人学生と外国人学生が一緒にディベートをする機会を設けてくれました。「日本の企業にはショーマンシップが必要」という議題でディベートをしたのですが、やはりそこでも、積極的に手を挙げて発言したのは、外国人の留学生でした。
この違いはどこにあるのでしょうか。日本人は手を挙げるのをなぜ怖がるのでしょうか。次のような理由が考えられます。
先日、中東やヨーロッパ、アメリカで駐在経験が20年を超えるある経営者に会う機会がありました。彼には2人のお嬢さんがいて、現地の学校に通っていたのですが、アメリカに住んでいたときに英語の授業の成績があまりよくなかったので、担任の先生に理由を聞きに行ったそうです。
「娘は宿題もちゃんとやっていますし、テストの成績もよかったのに、なぜこの成績なのですか?」と尋ねると、「授業に積極的に参加していなかったからです」と言われました。娘はまだ英語がそれほどできず、だからあまり発言をできなかったと伝えたところ、それならば英語の先生に話してくださいと言われ、考慮されたそうです。
積極的に発言すること、それが評価につながる、それを小さい頃から叩き込まれているのです。
石倉先生はハーバード大学で博士号を取得していますが、彼女もアメリカに初めて行ったときには、教授の言っていることが全然分からずかなり困惑したそうです。ただ、一番前に座り、何か聞かれたらまずは最初に手を挙げ、質問したり、発言をすることを心掛けたそうです。
議論が白熱すると、なかなか途中から加わるのは難しいので、最初に自分から手を挙げ何か発言する。そのことによって、教授や周りの人が自分のことを覚えてくれ、話をしやすくなったと言います。
わたし自身はというと、やはり学生の頃は、恥ずかしさもあり、あまり発言できなかった気がします。ただ、イギリスの会社で働いたり、いろいろな経験を積む中で、発言する、質問したり意見を言うことの大切さを実感し、今はそれほど怖がらずに発言できるようになりました(もちろん今でも多少は緊張しますが)。
先日は大学院で日産自動車のカルロス・ゴーン社長の講演があり数百名の中でしたが、思い切って質問を直接できました。やはり直接質問をして、目を見ながら返事をもらえると嬉しいものでした。年齢とともに度胸がついてくる?! ということもあるかもしれませんが、日々心がけているのは、相手の話を聞いているとき、「これってなんだろう」「これはもうちょっと聞いてみたい」「これは違うかな」など思ったことを書き留めておき、質問したり発言したりするように心掛けています。
たどたどしい英語でもいいので、まずは手を挙げる。グローバル時代はその一歩が大切になるのだと思います。
林正愛(りんじょんえ)
BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ、ファイナンシャルプランナー、英検1級、TOEIC955点。津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。British Airwaysに入社し、客室乗務員として成田―ロンドン間を乗務。その後中央経済社にて経営、会計関連の書籍の編集に携わった後、日本経済新聞社に入社し、経営、経済関連の書籍の企画および編集を行う。2006年4月に退職し、「眠っている才能を呼び覚ませ」というミッションのもと、優秀な人たちが活躍する場を提供したいという思いから、同年10月にアマプロ株式会社を設立。仕事を通じて培ってきたコミュニケーション力や編集力を生かして、企業の情報発信をサポートするために奔走している。
企業の経営層とのインタビューを数多くこなし、その数は100名以上に達する。その中からリーダーの行動変革に興味を持ち、アメリカでエグセクティブコーチングの第一人者で、GEやフォードなどの社長のコーチングを行ったマーシャル・ゴールドスミス氏にコーチングを学ぶ。現在は経営層のコーチングも行う。コミュニケーションのプロフェッショナルが集まった国際団体、IABC(International Association of Business Communicators) のジャパンチャプターの理事も務める。2012年4月から慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科で学んでいる。著書『紅茶にあう美味しいイギリスのお菓子』(2000年、アスペクト)。2児の母。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授