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» 2012年10月15日 08時00分 公開

社員教育用マニュアルの作成マニュアルから企業理念が見える(2/2 ページ)

[勝畑 良(ディー・オー・エム・フロンティア),ITmedia]
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新入社員教育マニュアルには基本が網羅されている

 業務の経営内の位置づけが分からずに仕事をしている従業員は、この世に存在するのだろうか。自分の仕事すなわち職務が分かっていなければ、当然その職務を遂行する作業手順は分からないということになる。いくら丁寧に作業手順を指導し教えても、その職務の業務上の位置づけが分からなければ、作業者は処理する作業手順の一つひとつの優位性を自分の頭で判断することはできない。彼らに頭は不要ということになる。作業手順―職務―業務―経営計画―経営方針―社是というピラミッドの中核は業務である。業務が負うべき経営上の責任が、作業の基点である。この認識が作業の必要性を生むのである。

 マニュアルの基本は作業手順書である。しかし、作業手順にも優劣、遅速がある。それを決定するのは業務が経営から委ねられた責務である。

 新入社員マニュアルを作成するためには、この業務にどのような責任を課せられているかを職務段階に落として考える絶好の機会である。その業務を担当している職務責任者は、幾分かの時間を割愛して、今、自分の業務を遂行していくために、どのように職務分担が行われるべきか討論すると良い。必ず自分たちの頭の上にどのような責務があるのか認識できるだろう。この意識の下に作成される新入社員用のマニュアルには、手順解明のプライオリティが反映されるはずである。

 マニュアル作成は課内討論から始めなくてはならない。この討論のテーマは業務から与えられた職務の使命つまりプライオリティということになる。つまり、経営意思の確認ということである。経営意思が確認できれば職務の重要性は、自然と決定する。ここで職務の経営上の役割が明確になる。それを目的として書く。これが最初である。次に職務の内容の概括を記し、次に作業手順、その手順遂行に当たっての注意事項を書けば良い。

 職務の目的、内容、作業手順、注意事項の順序でこの4つを書けばマニュアルは完成する。作業の中身は自然に伝達される。どのような会社でも新入社員は素人であり、指導する社員は玄人である。このマニュアルは必ず浸透する。次に、大切なことは新入社員の反応を待つことである。この反応から自分の作成したマニュアルの長所と短所が明らかになる。これを考え指導を反復するか、マニュアルを改訂するとよい。マニュアルは育ち始めるのである。

 新入社員をどう教育するのかといった業務マニュアルの作り方の基本を述べた。これはマニュアルの作り方のうち、目的別マニュアルの作り方という範疇にはいる。この方法は、その特定テ−マが一部門、一業務にとらわれず、どこの部門にも必要な職務である場合に最も有効なマニュアルの作り方である。その職務内容がどこの部門という特定がなく、どこの部門にも、業務にも欠かせない職務をマニュアル化しなければならない場合に用いられる手法である。原則が容易でだれにも分かる仕事のノウハウを伝達するのに効果的である。これはマニュアル作りの第一歩といえるだろう。

 マニュアルは経営理念、経営戦略、業務活動、作業手順の4つの目的理解と、理念マニュアル、テキストマニュアル、オペレーションマニュアルの3つの機能形式をもっている。このマニュアルは3つの機能形式のうちの一つ、オペレーションマニュアルである。そして、内容は組織の上位マニュアルである社是、社訓、経営方針と逸脱するものでないのは当然である。つまり企業意思を伝達していく組織的ヒエラルキーの秩序の中で制作されている。さちんとした経営基本計画、採用人員の決定、新入社員の受け入れ、配属先の決定、という企業の人事業務があり、その一つとして新入社員教育は存在する。

 新入社員教育マニュアルはこの4つの機能の基底部分を構成する職務マニュアルの一つとして作られるのである。オペレ−ションマニュアルであるから、記述内容の中心は手順である。しかし、その手順書の中に組織の上から下、下から上への意思伝達が表現されている。マニュアル制作者はこのことを忘れてはならない。

 日程の決定、講師の選定、教育場所、教育に必要な用具の準備、受講者への連絡といった沢山の作業手順がある。こうした多くの作業手順を一つずつ独立した作業手順書としてまとめるかあるいはこれらをいくつかまとめて作成するかはマニュアル製作者が判断する以外にない。これを「括り」と呼び、マニュアル作りの中で最も苦心を要するところである。この仕事は管理者以外に誰も決定できない。この「括り」には、職務担当組織の現在の実力が、そのまま反映されるからである。

 この「括り」は前述した職務マニュアルの内容を自動的に決定することになる。さらに、職務マニュアルを構成する行動手順書のレベルも同時的に決定する。行動レベルか手順レベルかが決まるのである。この決定をするのは組織の責任者であり、マニュアルの書き手ではない。

著者プロフィール

勝畑 良(かつはた まこと)

株式会社ディー・オー・エム・フロンティア 代表取締役 

1936年東京生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、1964年にキャタピラー三菱(株)に入社。勤労部、経営企画部、資金部を経て、1986年、オフィス・マネジメント事業部長としてドキュメンテーションの制作、業務マニュアルの作成、語学教材の発行などさまざまな新規事業に取り組み、1992年4月、業務マニュアルの制作会社である(株)ディー・オー・エム(現在:株式会社ディー・オー・エム・フロンティア)を設立し、代表取締役に就任。「いま、なぜマニュアル革命なのか?」(『企業診断連載』)で平成2年度日本規格標準化文献賞<最優秀賞>受賞など論文多数。


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