「プレゼンテーション本番では、堂々、はっきり、笑顔、指先が重要になる。口よりも先に指先で相手に物事を伝えたのがスティーブ・ジョブズである。彼は、必ず左右の手の人差し指だけでiPhoneを持ってプレゼンテーションをした。これにより、iPhoneが繊細で品質が高いことをイメージさせた。これは多くのエグゼクティブが使っている方法である。次に動きもポイントである。自分が想像している以上に動くことが必要で、小さく動くと落ち着きのない人に見えてしまう」(西脇氏)
米国では、客席に入っていくプレゼンターもいる。話をしながら左右に動き、自然な視線誘導を行う。また「接続詞」で振り向く動作は効果的である。映画やテレビ番組では、接続詞で振り向くことが多く、見慣れている。さらに最初の言葉と最後の言葉を決めておくことも重要。特に第一声から180秒がプレゼンテーションを左右する。話を聞くか、聞かないかは、ここで決まるといっても過言ではない。必要なのは、まず挨拶、次に名前、そして組織と名前となる。西脇氏も冒頭で自分の名前を2回、言っている。
「プレゼンテーションでは、自分の名前を売り込む」と西脇氏。次に本当のプロフィールと今日のプロフィールを話す。今日のプロフィールとは、天気や場所、会場までの交通手段など、講師と聴講者の共通の話題である。また、つかみは最初の5分、遅くとも10分できまり、最初の10分で笑わない客はその後も笑わない。このとき自虐ネタはOKだが、下ネタはNGである。さらに「見にくい」「分かりにくい」などの汚い言葉を避け、「見づらい」「分かりづらい」という美しい言葉を使うようにする。
「あるテレセールスの会社の女性の言葉遣いを指導した。テレセールスなので、身振りとか、笑顔などのテクニックを使うことはできず、声だけでセールスをしなければならない。そこで約1カ月間、徹底して汚い言葉を排除し、美しい言葉に置き換える指導をした結果、1カ月の売上を12%伸ばすことができた。営業時間を1割、人員を1割増やすためにはコストがかかる。ところが言葉遣いを丁寧にするだけで売上を1割伸ばすことができるので、非常に大きな効果が期待できる」(西脇氏)
また言葉をリワインド(巻き戻し)しないことも重要。ここで言うリワインドとは、言い間違えを訂正することだ。「例えば、"2013年の見込は……"と言わなければならないときに、"2012年……"と言ってしまった場合、訂正して"すみません。2013年の……"と言い直すのではなく、"2012年……の業績を超える2013年の見込……"と続ける。理由は、リワインドすると、その人の言っていることがウソっぽく聞こえるためだ。リワインドしないことで、この人は最終的に信頼できるという効果が生まれる。
さらに言葉の修飾だが、スティーブ・ジョブズは「プレゼンテーションでは、言葉をドレスアップしなければならない」と著書に記している。つまり、名詞はかならず副詞・形容詞などで修飾する。例えば「皆さんは……」ではなく、「ご来場いたいている皆さんは……」、さらに「お忙しい中ご来場いたき、真剣なまなざしで聞いて頂いている皆さんは……」となる。同時に言葉は進行形で表現する。「画面が表示されました」ではなく、「画面が表示されます」とすることで、より美しいプレゼンテーションとなる。
プレゼンテーションでは、語尾も重要であり「体言止め」「質問と回答」「魅力を最後にする」という「3つの語尾活用法」が有効になる。例えば「われわれはこうやって危険性を指摘してきたのです」という言葉を体言止めにすると「われわれが行ってきたのはとても重要なことです、そう、危険性の指摘」となる。また質問と回答では、「危険性の指摘を行ってきたのは?そう、われわれなんです」となり、魅力を最後にするでは、「われわれは危険性の指摘をしました、しかも、素早く、そして完璧に」となる。
最後に西脇氏は、「プレゼンテーションでは、10%程度の人は聞いていない。問題はその人たちが気になること。これが不安をあおることになる。そこでペースメーカーを見つける。例えば、こちらの言葉に常にうなずいてくれる人を見つけることだ。これにより自分のペースをつかみやすくなる。全体を見回しながらペースメーカーに話しかけることで緊張することなくプレゼンテーションを行うことができる」とプレゼンテーション中の緊張のほぐし方について語り、講演を終えた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授