散乱するビッグデータをマーケティングで活用(2/2 ページ)

» 2013年10月04日 08時00分 公開
[山下竜大,ITmedia]
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顧客データ取引市場

 BlueKaiは、米国で最大の顧客データマーケットプレイスを運営している。このマーケットプレイスでは、自動車、金融、教育、小売り、旅行、消費財など、BlueKaiが収集した約1億9000万件の購買意欲データのほか、外部のデータ供給パートナーから提供されるブランド公開のデータ。そして地域、生活様式、興味、行動特性、購買履歴、将来予測など、約7億プロファイルのブランド未公開のデータを活用することができる。

 「旅行や金融商品、車、教育など、さまざまなサイトのビッグデータをシステムに蓄積し、タグ付けを行って、企業間でそのデータをやりとりする。マーケットプレイスから必要なデータを抽出し、自分たちのお客さまについて理解していなかったことを知るためのデータを獲得することができる」(タワコル氏)

 活用事例としては、まず自社サイトへの訪問、登録フォームへの顧客情報の記入、Eメールによるプロモーション情報、カスタマーセンターへの問い合わせ、キャンペーン登録、商品の検索、店舗での購買情報、モバイルアプリなどで顧客を知る。次にサイトへの再訪問の促進と外部データによる潜在顧客の探索を行う。

 また広告から自社サイトにユーザーが訪問したにも関わらず、商品の購入などに至らなかった場合、さまざまな広告メディアを通じてそのユーザーのニーズを満たす(例えば「今なら送料無料」などの)カスタマイズされた広告クリエイティブを出稿して、再来訪を促進することが可能になる。

 「この方法は、競合のサイトを訪れたり、価格比較サイトを訪れたり、見込み客の探索に対しても有効になる。これがデータドリブンマーケティングとして、最もよく普及している方法である。中でも特に台頭しているのが、自社サイトへの訪問者に応じてサイトの表示内容を最適化するサイトオプティマイゼーションである」(タワコル氏)

 例えばプロフィールを見ると家具に興味を持っていて、その家具を買おうとしている女性に対し、"いまなら送料無料"といったサービスを提供することができる。また芝刈り機に興味がある別の利用者のトップページだけに芝刈り機を表示することも有効になる。タワコル氏は、「サイトを利用者に最適化することで、200%、300%の売上向上を実現している企業もある」と言う。

 もうひとつのアナリティクスとして、よく使われるようになってきたのが、既存のお客さまの類似モデルを設計することによる潜在顧客の発掘である。

 例えば広告代理店の担当者やマーケターが、データの属性を見て顧客を理解しようとしても、非常にデータ量が多いために実現できない。一方、類似性モデルを活用することで、何千もの顧客、何百万もの製品からアルゴリズム的なスコアを導き出すことができる。これにより、どの媒体に広告を配信すればよいかがスコアとして把握できる。

 「芝刈り機を購入した1万人分のデータがある場合に、100万人分のデータから、実際に芝刈り機を購入した1万人分のデータと類似しているものをアルゴリズムで分析する。そして、類似している人だけに広告を限定して配信することができる」(タワコル氏)

データドリブンマーケティングで高いROIを実現

 米国のグローバル大手ソフトウェア企業では、店舗やサービス、クラウドなど、さまざまなデータグループに分かれていたものを、データ・マネジメント・プラットフォーム(DMP)に統合し広告配信を最適化している。

 「この企業ではデータをいろいろなチャネルで活用する、データドリブンマーケティングがきちんと機能している。これにより、高いマーケティングROIを生み出すことができる。特にリターゲティングが効果を生み出している。別の金融機関では、見込客の探索で200%の効果を出した例や、リテール企業で、データに基づきクリックスルーレートを向上した例もある」(タワコル氏)

 そのほか自動車メーカーでも、広告に対するレスポンスレートが2倍、3倍に増えたという。タワコル氏は、「オーディエンスアナリティクスにより、無駄な広告宣伝をやめ、そのコストを新規顧客獲得に用いる。そして、データドリブンマーケティングにより、成果を出しつつ、売上を向上させ成長を拡大することができる」と話している。


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