自分で成長できる自律型人材を増やす方法社員が自律的に成長し続ける組織の創り方(2/2 ページ)

» 2014年01月08日 08時00分 公開
[上林周平(シェイク),ITmedia]
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同じ経験をしても人の成長は違ってくる。その違いは何が引き起こしているのか

 自ら成長できる若手社員を育てるために、挑戦と後押しの「ストレッチ支援」について述べたが、別の観点からもうひとつ述べていきたい。

 若手社員を見ていてよくあるのは、配属先で同じような仕事をしていても一年経つと若手社員の成長に大きな差が出てくるということだ。配属前の段階では、同じような力を発揮していたにも関わらず、一年を経過すると多くの差が出てくる。同じ経験をしたら、同じように成長するのであれば楽である。しかし、実際は違う。その差はどこから生まれるのか。

 デービッド・コルブ氏が提唱した「経験学習サイクル」では、経験から成長をするにあたり、4つのプロセスをもとにしたサイクルで定義している。それはまず、(1)「経験」をし、その上で(2)「内省」を通じて、経験を観察し振り返る。そして、経験から今後に使えるように概念化を行って自分の中で(3)「持論化」として蓄積し、その蓄積したものをもとに(4)「実践」として、新しい取り組みを行う。

 ストレッチな「経験」をしたとしても、その後の「内省」「持論化」「実践」を行わないと、その経験は成長にはつながらない。同じ経験をしたとしても差が出てくるのは、このプロセスの違いによってである。

経験を成長につなげるために、マネジャーは何をするべきなのか

 成長につながるための支援とは具体的にどのようなものがあるのか。先ほどと同様、100部署以上の職場の「キヅキ支援」8つの実態を見てもらいたい。

1位:積み重ねの重要性を説く 76.4

2位:小さな成功を思い出させる 63.4

3位:事実に基づいて褒める 61.1

4位:振り返りの機会を設ける 57.4

5位:行動パターンに気付かせる 56.4

6位:日常の行動を観察する 55.4

7位:自分と向き合わせる 54.0

8位:学んだことに気付かせる 35.7

※スコアは質問群に対する回答(当てはまる"100 "⇔当てはまらない"0")から算出

 「積み重ねの重要性を説く」「小さな成功を思い出させる」というような経験自体にフォーカスしているものは、相対的に高いスコアが出ている。一方で、「学んだことにきづかせる」「自分と向き合わせる」「日常の行動を観察する」というような経験を深くとらえ、何を吸収できるかを促すような支援に関しては、低いスコアが出ている。先ほどの「経験学習サイクル」がきちんと回るように支援しているとは言い切れないのが実態であり、それが想定よりも成長できない実情を引き起こしている可能性がある。

自ら成長する人材を育てるために

 常に思うのは、若手社員も成長を求めているということである。それは、前述の「成長の踊り場」や「学習性無力感」という言葉のメモを取る姿勢や、育成プログラム時にフィードバックを求めに来る人を見るたびに感じることである。しかし、忙しい職場の中で失敗を恐れてしまい、その後の一歩が踏み出せず、成長を鈍化させている人が多い。

 マネジャーとしてやるべきことは、次のステージの魅力や若手の持っている能力を伝えるような後押しをしながら、若手社員にストレッチな経験を積んでもらう。そしてその経験から挑戦する楽しさを実感してもらう。その上で若手社員が、経験に対して自ら内省する習慣をつけていけるように、「そこで学んだこと、今後に活かせることは何か」と問いかけるような支援をしていくことが大事なのである。

 それらのサイクルを経験する中で、若手社員が自ら「経験学習サイクル」を回していけることを目指す。育成というと、やり方を教えることだと捉えがちだが「経験学習サイクル」を自ら回せるようにすることが最も重要なことなのである。皆さんの職場の若手社員は、自ら「経験学習サイクル」を回せるかを、改めて振り返ってほしい。

 今回は、4種類の支援の中の「ストレッチ支援」「キヅキ支援」を中心に、自分で成長できる自律型人材を育てるという点についてまとめた。次回は、本人が成長していると実感したり、この職場でもっと成長できると思ったりするためには、どのような支援が必要なのかという観点から考えていきたい。

著者プロフィール

上林 周平

株式会社シェイク 取締役

大阪大学人間科学部卒。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。主に業務変革などのコンサルティング業務に携わる。2002年シェイク入社。各種コンサルティング業務と並行し、人材育成事業の立ち上げに従事。その後、商品開発責任者として、新入社員から若手・中堅層、管理職層までの各種育成プログラムを開発。また、2004年からはファシリテーターとして登壇し、新入社員から若手・中堅層、管理職層まで育成に携わった人数は1万人を超える。2011年9月より取締役就任。


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