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» 2015年11月24日 08時00分 公開

日本式イノベーションの起こし方:イノベーターは無責任で無愛想? (2/2)

[井上功,ITmedia]
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イノベーターの共通項〜膨大なエネルギー、徹底的に楽しむ姿勢、強い志

 ヨソ者、バカ者、若者はエネルギーが膨大です。どんどん前に進んでいく。話量が多く、比較的声も大きい。

 そして、とにかく楽しそう。イノベーションは新しいことであるが故に、成功の保証はどこにもありません。イノベーション創出のプロセスは、軋轢、誤解、矛盾、ねたみ、軽蔑、誹謗、中傷、落胆、失望の嵐です。にもかかわらず、彼らはとても楽しそう。自分が進めてきたイノベーションに関しては、「こんなご機嫌なことはない」とでも言わんばかりでした。

 「志」の強さもイノベーターの特徴です。志は普通、高低で表わされますが、イノベーターの志は「強かった」。「私がやらなければ、いったい誰がやるというんだ」という無限義務のような強い信念を感じました。青臭い志をもち、いっぽうどこか腹黒い。「青黒さ」をイノベーターは持っています。

イノベーターの思考の特徴〜目的志向、徹底した内省

 イノベーターの思考の特徴について考えてみましょう。ほとんどのイノベーターから聞くことができた言葉があります。「われわれはどんな新しい価値を創出するのか?」「いったい、誰の役に立ちたいのか?」「それは何のためにやるのか?」「なぜやるのか?」「自分でなければだめなのか?」。

 全てのイノベーターはこのような明確な目的意識を持っていました。われわれは何のために日々仕事をしているのか、誰の役に立っているのか。極端にいえば何のために生きているのか、ということを真剣に考えているのです。

 徹底した内省もイノベーターの思考の特徴です。皆さんの会社には、長期勤続の社員などを対象にしたリフレッシュ休暇はありますか? よく耳にするこのような制度を活用し、とんでもない行動にでて、徹底した内省の末に幾つものイノベーションをおこした人がいます。

 元ドコモ・ヘルスケア社長の竹林一氏です。竹林氏は、長期リフレッシュ制度を利用して、東京から滋賀県大津の自宅まで歩いて帰ります。都合15泊16日、東海道を歩き続けました。歩きながら考える。自分とは。仕事とは。社会とは。自分の存在意義は。時間的呪縛から解き放れたこの東海道行がきっかけとなり、竹林氏はソフトウェア会社の事業再定義、再構築、自動改札機を活用したサービス事業の開発、健康と通信の領域を融合させた新しい価値の創出などのさまざまなイノベーションを起こすことになるのです。

 その他にも、イノベーターは鳥の目で俯瞰して物事を見て、虫の目で対象に迫る迫力をもち、不便、不満、不安、不足といった「不」を基点に思考するといった特徴があります。

イノベーターと接するには

 では、経営者としてどのようにイノベーターと接し、どう生かせばいいのでしょうか?イノベーターは極めてパーソナルな執念を持っています。それは、組織の論理や都合とはかけ離れていることが多い。ときに、執念を超越したおどろおどろしいエネルギーに満ちた「情念】と化しています。その本質を見極め、経営者として「のってあげること」が必要です。例えば、自社内のヤミ研究を公認し、市場や組織の間を自由に行き来する実行部隊をつくりあげることもひとつの手です。

 以前は多くのイノベーションが「ヤミ研究」や「密造酒づくり」と言われる非公認な活動から生まれましたが、今はそんな悠長なことはやっていられません。小さな租界(本社組織から離れ一定のマネジメント権を持つチーム)を用意してあげることで、イノベーターは水を得た魚のように、いきいきと情念にのっとってイノベーションを推し進めてくれるでしょう。

著者プロフィール:井上 功(こう)

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ エグゼクティブプランナー

1986年リクルート入社、企業の採用支援、組織活性化業務に従事。2001年、HCソリューショングループの立ち上げを実施。以来11年間、リクルートで人と組織の領域のコンサルティングに携わる。2012年より現職。イノベーション支援領域では、イノベーション人材の可視化、人材開発、組織開発、経営指標づくり、組織文化の可視化などに取り組む。

著書:「リクルートの現場力」、「なぜエリート社員がリーダーになると、イノベーションは失敗するのか」(ダイヤモンド社)


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