社長に聞いてみないと分からない……。社長の了解がないとできない……。ボードメンバーからこのような発言が出てくる状況は、かなり深刻だ。経営チームを機能させるにはどうすればいいのか。
第1回は、「経営の仕事は一人でこなすことはできない。経営はチームでやるもの。とはいえ、チームが機能するのは時間がかかる」ということをお伝えした。今回は、「トップ1人で仕切らない」というテーマで経営チームが機能するために必要なことをお伝えしていく。
社長に聞いてみないと分からない……。社長の了解がないとできない……。社長が出張でいないからハンコがもらえない……。自分の提案で進めたいが社長がいいと言わないと進められない……。管理職者や従業員からこのような言葉が出てくるのは当然あるだろう。しかし、ボードメンバーからそのような言葉が出てくる状況であれば、深刻な問題だ。それは、ボードメンバーが自分の仕事の最終責任者は自分だと思って仕事にあたっていない表れだからだ。
実際、ボードメンバーと話をすると、「自分はどこまで権限を与えられているか分からない」という声を聞くことがある。もちろん、会社の最終的な責任者は社長であり、重要なことは社長が最後に決めなければならない。だからかといって何から何まで、すべて社長1人で決めなければ何も始まらないという組織ではその後のさらなる発展は望めない。それでは優れた人の本当の力が発揮されないからだ。
現在のお客さまが永遠にお客さまでいてくれる保証はどこにもない。事業は常にお客さまのニーズに応えていかなければお客さまから見放されてしまう。同時に、常に新しい満足を創り出していかなければ事業は陳腐化していく。そのためには、優秀な人材を採用し、育成していかなければならない。資金繰りも見ていかなければならないのは当然だ。事業は成長すればするほどさまざまな課題が次から次へとやってくる。
多岐に渡る課題を1人でこなそうとしても手が回らない。その結果、打つべき時に打つべき手立てが打てなくなる。経営は数人からなるチームで進めなければ事業の繁栄はおろか存続すらできない。ドラッカーはこう言っている。
「トップマネジメントがチームとして機能するには、いつくかの厳しい条件を満たさなければならない。チームはシンプルではない。仲の良さで機能させることはできない。好き嫌いは問題ではない。人間関係に関わりなく、トップマネジメントはチームとして機能しなければならない」
では、経営チームをチームとして機能させるにはどうすればいいのか。ドラッカーはさらにこう言っている。
「トップマネジメントチームのメンバーは、それぞれの担当分野において最終的な決定権をもつ。各メンバーの決定に対し、他のメンバーが異議を唱えることはできない。担当する者が最終決定者である。他のメンバーからの異議を認めるならば、政争が起きるだけである。トップマネジメントそのものの権威が低下する。」
明確な責任と具体的な権限を与えられないまま成果をあげることなどできない。責任とは、「なすべき務めとして、自身に引き受けなければならないもの」であり、権限とは、「あげるべき成果をあげるために自分で決められるその範囲のこと」だ。
社長と言えども、ボードメンバーが担当する分野のことに口出しをしてはならないのだ。任せるものは任せなければならない。現実、ボードメンバーの意識について嘆く社長は少なくない。もしかすると、社長がボードメンバーに明確な責任と具体的な権限を与えていないことがその状況を生んでしまっているかもしれない。どんな責任を与えているか、どこまで具体的な権限を与えているかをいま一度、自己点検してほしい。
トップマネジメントそのものの権威が低下するとは、上司の信頼を壊すということだ。仮に、ボードメンバーの1人があることを決定し、その決定を部下に伝え、仕事を進めていたとする。その決定を社長がひっくり返してしまえば、部下は、「自分の上司が何かを決めても、結局社長に聞いてみないと分からない。だから、これからは上司の指示より社長の指示に従おう」という考えに至ってしまう。それでは、ボードメンバーは部下を率いていくことができなくなってしまう。さらに、トップマネジメントそのものの権威が低下する。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授