ある会社でこんなことがあった。その会社は、商品開発を2人の役員が担当していた。役員の1人は副社長で、もう1人は専務だった。 副社長と専務の指示が分かれ、現場に混乱を招くということが頻繁に発生していた。言うまでもなく、現場の仕事は止まってしまう。
「副社長と専務の考えに違いがあること」は問題ではない。すべての考えが一致することなどはなからない。しかし、「副社長と専務から違う指示が出ること」は大きな問題だ。経営チームの仕事は、現場が成果をあげられるように会社としての考えを決めることだ。ところが、経営チーム自ら現場の足を引っ張り、機会損失を招いてしまっている。
事実、この会社はその当時、新商品の開発は遅れ、リリースの予定が過ぎても世に出ていかない。結果として、業績は上がらない。副社長と専務は、生産性の悪さを引っ張り出して開発部長を叱りつけていた。もちろん、副社長も専務も悪意あってそうしているわけではない。
このケースからわれわれが学べることは、「1つの部門に2人の責任者を配置しない」ということだ。経営チームが問題を問題と認識しない限り、同じ問題が繰り返し起こり会社全体の生産性を下げていってしまう。
事業を成功に導くために、それぞれに担当分野の最終的な決定権を持って経営を進めていってほしい。第3回目は、「第2に、担当以外のことは決めない」というテーマで話す。
トップマネジメント株式会社 代表取締役
ドラッカー専門のコンサルタント。コンサルティングファーム出身、上場企業役員を経て、トップマネジメント株式会社を設立。上場企業を始めとして、IT企業の経営チームにドラッカーの理論を活用するコンサルティングを提供している。一般社団法人日本経営協会専任講師、淑徳大学の経営学講師、デジタルハリウッド大学院大学客員教授、ダイヤモンドビジネスタレント派遣講師を務める。著書『ドラッカーに学ぶお客様を幸せにする会社の作り方』(角川フォレスタ)、寄稿に『人材育成の教科書』(ダイヤモンド社)、『企業と人材』、『経済界』、『人事マネジメント』等。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授