新・上司力は、女性活躍だけではないビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

男性中心のピラミッド構造で通用していた上司力はもはや古い。女性の育成や活躍支援だけでは不十分。広がり続ける多様な部下を理解し、育て活かせる新しい上司力が求められている。

» 2016年01月07日 08時00分 公開
[前川孝雄ITmedia]
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ダイバーシティの教科書

 2015年8月に「女性活躍推進法」が成立し、301人以上の企業は自社の女性活躍の現状分析を踏まえ、女性活躍を推進するための課題を設定し、数値目標と行動計画を策定、届出、周知、公表まで義務付けられることになった。この連載を読むリーダーの中にも、会社で女性活躍に向けた経営層・人事からの通達や研修を受けた方も多いはずだ。

 私は2008年に『女性社員のトリセツ』(ダイヤモンド社)、2012年に『女性の部下の活かし方』(メディアファクトリー)を書き、この課題に取り組んできた。私が営むFeelWorksでは、100社以上で「女性の活躍を支援する上司力研修」を提供、「仕事と家庭の両立支援ガイド」や「ダイバーシティレポート」や「セクハラ防止上司力マニュアル」などを受託制作し、女性が活躍できる組織風土づくりにも積極的に勤しんできた。

 ただし、これらの事業活動は、男女平等意識やジェンダー的観点から女性のキャリア支援を第一義として進めてきたわけではない。むしろ上司層が抱く部下指導・育成の悩みや戸惑いを受け止め、それを緩和し解消することを重要視してきた。さらには、その先にある現場のコミュニケーション不全を解決し、個人の働きがい喚起や成長と企業の持続成長を共に実現することを目的に据えてきた。

 FeelWorksはリーマンショックが起こった2008年に、「人を大切に育て活かす社会づくりに貢献する」という志のもと、創業した。日本企業の競争優位の源泉である「人が育つ現場」の劣化にいてもたってもいられなくなったからだ。「人が育つ現場」再生の鍵を握るのは、いうまでもなく上司であるリーダー層の意識と行動改革だ。こう話すと、リーダーの皆さんの状況を鑑みずに矯正を促すように聞こえるかもしれないが、そういったスタンスではない。むしろ逆のアプローチで、リーダーの皆さんの悩みを解決しながら、新しい上司力を学んでもらうことに注力してきた。

 創業当初は『頭痛のタネは新入社員』(新潮社)を書き、上司の悩みの筆頭であった若手の定着や育成に力を入れてきた。その問題に取り組むうちに「新人や若手の育成も課題だが、職場に増えてきた女性が結婚・出産後も辞めずに働き続けることにも取り組みたい」「長く働くようになった女性を管理職などへステップアップさせたい」と企業の人事・組織課題はシフトしていった。これは現場を預かる上司の「育休明け時短勤務の女性部下のマネジメントが難しい」「どういった女性を管理職の候補とし鍛えればよいのかわからない」といった悩みとなり、私たちはこれに応えるべく研修やコンサルティングの内容を進化させてきた。

 そうこうするうちに女性活躍推進法が成立し、大半の企業に女性活躍が義務づけられたわけだが、法律に急かされて動いている企業は三周ほど周回遅れと言わざるを得ない。少子高齢化、サービス業化といった、労働市場や事業環境の変化に敏感な企業ほど、とっくの昔から女性活躍を経営戦略として取り組んできている。

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