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» 2016年01月07日 08時00分 公開

新・上司力は、女性活躍だけではないビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

[前川孝雄,ITmedia]
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 また、私たちが育成風土改革を支援する大手メーカーでは、2010年ごろからシニア層の活性化、これは現場上司にすると年上部下のマネジメント問題を重要視するように変わってきている。さらには、派遣・業務委託・契約など増える非正規雇用者の戦力化を重視する企業も少なくない。アジア圏を主な視野とするグローバル化によって、中国や韓国、ベトナムやタイといったアジアの人々をマネジメントする仕組みも、製造業はもちろん、非製造業でも急ピッチで作られてきている。ここ数年では、家族の介護問題を抱える人も急増しており、私たちが経営会議のファシリテーションを務める上場企業では、経験豊富な従業員の介護離職をいかに防ぐかが重要な経営課題として議論されている。

 これら企業課題の変化は、見事に上司層の悩みや戸惑いに直結している。私たちが新任管理職研修を支援するグローバルメーカーでは、2015年の現場上司層の悩みの筆頭は「先輩や元上司が部下になりマネジメントに気を使う」ということであった。また人材育成コンサルティングをしている大手サービス業では、「文化的背景の違うアジアの人々でチームを作ることに手を焼いている」といった上司の悩みを受けて異文化を理解し活用する研修が新設された。別のインフラ関連企業では、現場上司を中心に「役職定年者、シニアスタッフのマネジメントのノウハウ」を蓄積・伝播する取り組みが始まっている。

 これらを俯瞰して分かるように、日本人男性中心のピラミッド構造で通用していた上司力はもはや古いのである。女性の育成や活躍支援のための上司力も鍛えておかなければならないが、それだけでは不十分だ。シニア、派遣、外国人、障害者、さらには性的マイノリティなど、広がり続ける多様な部下を理解し、育て活かせる新しい上司力が求められている。

 一方で、人事面において、そして現場において、これだけダイバーシティ(多様性)の重要性が叫ばれているにも関わらず、それらをまとめて学べる入門書がないと気づいた。大学などの研究者や欧米発信の専門書はあれども、日本企業の現場に即した実務書は皆無に近い。であるならば、ダイバーシティなんて言葉が流行する前から、全ての人に可能性があるという信念で人材育成に打ち込んできた私たちが書くべきではないだろうか。そう思い定め、生まれたのが『この1冊でポイントがわかる、ダイバーシティの教科書』(総合法令出版)だ。

 構成としては、女性、若者、シニア、派遣社員、外国人、障害者、性的マイノリティなど多様な人材を、それぞれ1章ごとに取り上げ、各テーマに通じたFeekWorksの人材育成コンサルタントや人材育成プロデューサーが、これらの人々をどう育て活かせば企業の持続成長に繋がるのか、ポイントを解説している。ダイバーシティ推進にこれから取り組む企業には前提や基本を理解する一助として、すでに取り組んでいる企業には自社の現状認識と今後の方向性を考える一助になれば本望だ。

 そして何より政権が打ち出す「1億総活躍」がどこか他人事に聞こえ、進む職場の多様化への対処法に苦慮する上司の皆さんのお役に立てば幸いである。

 ダイバーシティ時代の新しい上司力の基本は、上司が部下の上に立つんだという上意下達の思考を捨て去り、対等な相互依存の関係と置き直すことである。上司部下は、持ちつ持たれつの関係ということだ。さらには、コミュニケーションの重要性を飛躍的に高めることだ。コミュニケーションとは同質の価値観の人間同士ではそう難しくはない。しかし多様化が進み、異質の価値観の上司部下が向き合う状況になると、上司のコミュニケーション力の真骨頂が問われるようになる。そして、チーム成果の最大化に向けて多種多様な人たちが総力戦で挑むという意識を、リーダーはもちろん、メンバーの中でも高めていく努力をすることである。

著者プロフィール:前川 孝雄

(株)FeelWorks代表取締役・青山学院大学兼任講師

日本型ダイバーシティ・コミュニケーションの専門家集団 (株)FeelWorks創業者。1966年兵庫県生まれ。大阪府立大学、早稲田大学ビジネススクール卒業。リクルートで「リクナビ」「就職ジャーナル」「ケイコとマナブ」「Tech総研」などの編集長を歴任後、「人を大切に育て活かす社会づくりに貢献したい」という思いで2008年に同社設立。コミュニケーション循環を良くすることで温かい絆を育み組織の体質を変えていく「コミュニケーション・サイクル理論」を構築し、独自開発した「上司力研修」や「上司力鍛錬ゼミ」は、大手企業を中心に250社以上が導入。ミニドラマを用いた「働く人のルール講座」や「キャリアコンパス研修」、「女性幹部管理職研修」など、時代性を踏まえた先進的な研修プログラムを提供している。また、得意のメディア編集技術を駆使して、「ダイバーシティレポート」「仕事と家庭の両立支援ハンドブック」「セクハラ・パワハラ防止マニュアル」制作なども手掛け、長期伴走型で徹底した多様な人が育つ現場づくりを支援している。

2008年から続けるブログ「前川孝雄のはたらく論」は、アメブロ社長ランキング1位にもなり、講演・新聞連載・TVコメンテーターとしても活躍するなど、自らも部下を育て活かす「上司力」提唱の第一人者として熱く発信中。その親しみやすい人柄にはファンも多く、現場視点でのダイバーシティマネジメント推進、リーダーシップ開発、コミュニケーション設計、キャリア論には定評がある。

TV番組「めざせ!会社の星」「ワールドビジネスサテライト」「サキどり↑」「ニュース シブ5時」などに出演。読売新聞で「前川孝雄のはたらく心得」連載。

著書は「上司の9割は部下の成長に無関心」(PHP)、「女性の部下の活かし方」(メディアファクトリー)、「年上の部下とうまくつきあう9つのルール」(ダイヤモンド社)、「部下を育て、組織を活かす はじめての上司道」(アニモ出版)、「30代はアニキ力」(平凡社)、「働く人のルール」(明日香出版社)、「勉強会に1万円払うなら、上司と3回飲みなさい」(光文社)など多数。最新刊は「ダイバーシティの教科書」(総合法令出版)。


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