何かを決める時、後で予想外の問題に遭遇しないためにも、「意見の不一致」が必要。その場にいるすべての人が、異議なく異論なく考えが一致することはあり得ない。
現在、大手企業の会計問題、卓越した技術力を持つ企業の崩壊、そして、突然のトップマネジメントの交代など、思いもよらない出来事は枚挙に暇がない。それらは、一見、性格の違う問題に見えても起きていることには共通点がある。言い方を変えれば、「起こっていることは違う」ように見えても、「それらを起こしているものは同じ」である。お家騒動だ。
お家騒動は、ご存じのとおり、江戸時代に大名家の内紛を指すものとして使われた言葉だ。今日でも企業や政党など内部抗争の総称として使われる。平たい言葉で言えば、内輪もめである。その発端は、主権の奪い合い、人事決定の抗争、不当評価に対する怒り、方向性の決定をめぐる意見の食い違いなど、いろいろだ。
1990年代以降、企業の不祥事が相次いで発覚したことを背景に、コーポレート・ガバナンスという言葉がメディアに登場するようになった。コーポレート・ガバナンスとは、「企業が法令を順守して事業の運営に努めるよう、経営者が職務を適切に果たしているか客観的な目で監視する機能のこと」である。その制度は、企業にどんな影響を与えているのだろうか。
会社の方向性を左右する重要な意思決定においても、その審議を問う時に多数決で決議されるような風潮が色濃くなっている。まさに、企業のトップマネジメントは委員会になってしまっている。ミッションが曖昧であれば、そこにごまかしが生まれる。ミッションが共有されていなければ、そこに仲違いが起こる。そして、ミッションを追究しなければ、挑戦は起こらず、自らの陳腐化を招いてしまう。
歴史ある企業でそんなことが起こっているのはとても悲しい。トップマネジメントが重要な意思決定を多数決に委ねていいはずがない。「満場一致」はあとになって必ず、つなぎ目が弱かったところが、ほころびとなって現れる。では、どうすればいいのだろうか。
ドラッカーはこう言っている。
「成果をあげる者は、意図的に意見の不一致をつくりあげる。そのようにして、もっともらしいが間違っている意見や、不完全な意見によってだまされることを防ぐ。」
そして、こんな事例を紹介している。
「ゼネラルモータースのCEOアルフレッド・スローンは会議で、"この決定に関しては、みんな意見が一致していると思っていいか"と聞き、出席者全員が満場一致の時は、"この決定の結果がどうなるか、もっと理解するための時間が必要だ。よってこの件については異なる見解を引き出して、さらに検討することを提案したい"そう言って、その場での決定を避けて、決定の期日をあえて先に延ばしにした。成果をあげた企業のトップ、そして、実績を上げたアメリカの大統領、リンカーン、セオドア・ルールヴェルト、フランクリン・ルーズベルト、ハリー・トルーマンはいずれも、"この決定がどんな結果をもたらすか"ということについての理解を深めるために、意見の不一致を生み出していた」
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明治学院大学 経済学部准教授