満場一致は危険な意思決定ドラッカーに学ぶ、成功する経営チームの作り方(2/2 ページ)

» 2016年10月14日 07時14分 公開
[山下淳一郎ITmedia]
前のページへ 1|2       
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

会社の考えが定まらないのは問題

 もちろん、トップが他の役員の反対意見を封じ込めてしまえばそれまでだ。しかし、反対意見が出てこないのは、「社長がそう言っているのだからよしとしよう」という考えか、「自分には直接関係ない」といった、他人事としてしか考えていない証拠と言える。

 重要な何かを決める時は、のちに予想外の問題に遭遇しないためにも、「意見の不一致」が必要だ。そもそも、その場にいるすべての人が、異議なく異論なく、考えが一致することはあり得ない。人間の数だけ意見が違う。役員が十人いれば、そこには十通りの考えがある。

 どんな組織も、「私の立場に立っていえば私は正しい」、「あなたの立場に立っていえばあなたは正しい」。誰も間違ったことはいってはいない。多かれ少なかれ、それが組織の現実である。しかし、そのままでは、お互いの考えは交差することなく、会社の考えは定まらない。意見が食い違うのはいいが、いつまでも会社の考えが定まらないのは問題だ。

 正々堂々と話し合えばいいが、なかには話し合いを避け、見えない所で人の足を引っ張る人もいる。内紛が起こり、派閥が生まれる。そうなってからでは遅い。そうならないために必要なのは、真摯な話し合いだ。

 人間は理論と感情の両方で自ら動く。人と人を結ぶのは、誠実な話し合いしかない。経営チームは、組織上の上下関係はありながらも、お互い自分の考えを言い合える間柄である。それが、チームワークになくてはらないものだ。

例えるなら「内閣」のようなもの

 取締役が何人かいると、つい「うちの会社には経営チームがある」と錯覚してしまう。重要なことは、「経営チームがあるかないか」ではなく、「経営チームがチームとして機能しているかどうか」である。チームワークがなければ、不可能な仕事は不可能なままで終わる。チームワークが不可能な仕事を可能にする。

 経営チームがチームとして機能していない会社は、いつも同じ問題に追われて停滞している。それに対して、経営チームがチームとして機能している会社は、常に新しい課題を追いかけ発展している。

 一方、経営チームの具体的なイメージが湧かないという経営者も少なくない。経営チームの姿を具体的に例えるなら、「内閣」のようなものだ。内閣は、総理大臣というリーダーがいて、各分野の責任者である大臣がその分野の運営の一切を担っている。ここでいう総理が社長にあたり、大臣が他の役員にあたる。

 経営チームの一人ひとりがそれぞれの分野の責任者として、意見の不一致を活用しながら、意思の疎通をはかり、さらに事業を発展させていただきたい。

著者プロフィール:山下淳一郎

トップマネジメント株式会社 代表取締役

ドラッカー専門のコンサルタント。コンサルティングファーム出身、上場企業役員を経て、トップマネジメント株式会社を設立。上場企業を始めとして、IT企業の経営チームにドラッカーの理論を活用するコンサルティングを提供している。一般社団法人日本経営協会専任講師、淑徳大学の経営学講師、デジタルハリウッド大学院大学客員教授、ダイヤモンドビジネスタレント派遣講師を務める。著書『ドラッカーに学ぶお客様を幸せにする会社の作り方』(角川フォレスタ)、寄稿に『人材育成の教科書』(ダイヤモンド社)、『企業と人材』、『経済界』、『人事マネジメント』等。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆