マクドナルドでは、社員に名刺大の「Thank youカード」が配られる。これをポケットに入れていると、感謝できることを探し歩いている自分に気付く。「笑顔、ありがとう」「準備、ありがとう」「メンバーの育成、ありがとう」。感謝することは、いくらでもある。
あるクライアントから「褒めるところがない人を、どうやって褒めたらいいのか?」と相談されたことがある。自分自身を振り返っても、肯定的なフィードバックを書く手が止まってしまうメンバーが1人や2人はいた。
そんな私の問題点が、ある管理職研修で明らかになった。「このスタッフにフィードバックせよ」と映像を見せられた。作業手順を無視したスタッフの様子は、苦笑せざるを得ないほど散々だった。映像が終わると、「素晴らしい点をフィードバックせよ」との指示があり、ハンマーで頭を殴られたようなショックを受けた。間違いを数えながら見ていた自分に気付いたのだ。
あなたも間違い探しばかりをしていないだろうか? 成長してほしいと願っているからこそ、改善点を探しているのだろう。しかしそれだと、褒めたいときに褒められない。普段から「知りたい」という好奇心をもって探していなければ、その人の誠実さ、勇敢さ、公平さなどの「在り方」には気付けない。
「在り方」を認めることは、好奇心を持って探したからといって、今日からできるほど簡単ではない。練習を繰り返して、実践を積む必要がある。ゴルフや英語、プレゼンと同じだ。
では、どんな練習をすればよいのか? 私が勧めるのは、言い換え練習だ。短所のほうが目につきやすい。だが、短所は長所でもある。必ず肯定的な言葉に言い換えることができる。
例えば、新しいことに次々と飛びつき、1つのことを最後までやり遂げられないメンバーがいるとする。飽きっぽい。粘りがない。信念がない。否定的な言葉が思い浮かぶ。これを肯定的な言葉に言い換えてみる。好奇心旺盛、果敢、柔軟などだ。
最初はなかなか浮かばないだろう。毎日の通勤時間に、メンバーを思い浮かべながら言い換え練習をしてみてはどうだろうか? 思いついた単語は、スマホにメモしておくのもいい。
そして何よりも、実践だ。相手に伝える。緊張するし、照れ臭い。ならば、メールからスタートしてみよう。自信がついてきたら対面で伝えて、相手の反応を観察してほしい。
ところで、指示待ち人間ができるのは、リーダー側だけに問題があるのだろうか? リーダーが工夫をすれば、どんなメンバーも自発的に取り組むようになるのだろうか?
この連載のタイトルは、指示待ち人間を作る「リーダー」だ。「上司」ではない。上司と部下という上下の関係ではなく、フラットな横の関係を意識してもらいたい。そういう思いで、「リーダー」と「メンバー」という言葉を使っている。チームを持つマネジャーであるかどうかにかかわらず、自分の担当領域においては誰もがリーダーのはずだ。いや、リーダーでなければならない。
誰もがリーダーならば、全員の課題だ。1人1人がリーダーの自覚を持ち、指示待ち人間を作らないリーダーシップを目指せたら、組織としての成長も目覚しいだろう。しかし、どうしたらリーダーとしての自覚を持ってもらえるのだろうか?
次回(第4回)のテーマは「タイプ4 任せきれないリーダー」。リーダーの自覚を育てる「任せ方」と、指示待ち人間を作る「任せ方」について解説したい。
アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)にて、BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)プロジェクトを中心に、コンサルタントとして5年の実務を経験後、ベンチャービジネスに転じ、2年で単年度黒字、4年で累損を一掃する100億円規模のビジネス立ち上げを経験する。
その後、ソフトバンクモバイル、ローソン、マクドナルド、アマゾンと転じ、経営層のマーケティング領域の意思決定をサポート。 孫正義氏、新浪剛史氏、原田泳幸氏の意思決定や組織運営を間近にみるなかで、ゴール設定と達成イメージの言語化、視覚化の重要性を体感する。事業会社における経験はトータル19年。現在は、従業員、ビジネスパートナー、顧客、投資家、コミュニティー、家族など、みんなが社長に力を貸したくなる経営を提案し、「社長の360°サポーター化」を推進している。
慶應義塾大学卒。ビジネス・コーチ。アンガーマネジメントコンサルタントTM。マーケティング・コンサルタント。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
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明治学院大学 経済学部准教授