一見してデジタルテクノロジーとは縁遠いとみられている物流業界で今、ディスラプティブな変革が進行している。「ロジスティクス4.0」とも呼べる革新の本質は、脱労働集約にあり、既存の事業者は、これまでのやり方では立ち行かなくなる。
「日本企業も次なるGAFAになれる」── そう話すのは、長年、ロジスティクス/サプライチェーンの領域で日本企業にコンサルティングしてきた経験を持つローランド・ベルガーの小野塚征志プリンシパルだ。
一見してデジタルテクノロジーとは縁遠いとみられている物流業界で今、ディスラプティブな変革が進行している。「運ぶ」「荷役する」「梱包する」「手配する」といった物流の基本的なオペレーションは、IoT、AI、ロボティクスといったテクノロジーの活用によって省人化と標準化が進むことで人の介在をほとんど必要としなくなり、「装置産業化」すると小野塚氏は話す。
輸送の機械化、荷役の自動化、そして管理・処理のシステム化に次ぐ第4の革新、すなわち「ロジスティクス4.0」の本質は、脱労働集約にある。その意味では、日本の社会が抱える大きな課題である生産年齢人口の減少を解決してくれるが、既存の事業者にとっては、物流ビジネスが根底から変わり、これまでのやり方では立ち行かなくなるということでもある。
「日本の宅配サービスが10年も20年も世界の先を行っているのは確かだが、物流業界でこれから起ころうとしているゲームチェンジへの危機感はあまり見られない。ロジスティクス4.0がもたらす破壊と創造による非連続な成長は、日本企業が次のGAFAになる絶好の機会でもあるし、同時に海外勢に席巻される危機もはらんでいる」と小野塚氏は警鐘を鳴らす。
同氏がこの春、「ロジスティクス4.0 ── 物流の創造的革新」(日本経済新聞出版社刊)を上梓した背景にはそうした期待と危惧がある。
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明治学院大学 経済学部准教授