金融から非金融への拡大するロックチェーン。製品の製造、流通、販売過程の追跡や、シェアリング事業における提供者、利用者の評価情報の記録など、その適用領域は多岐にわたる。
2008年11月末、Satoshi Nakamotoを名乗る人物が「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」と題する論文を公開。翌1月、最初のブロックが生成され、暗号通貨ビットコイン及びそのブロックチェーンの運用が始まった。
そして、ブロックチェーン運用開始10周年の2019年、米Facebookは暗号通貨「Libra(リブラ)」を発表した。「シンプルで国境のないグローバルな通貨と金融インフラ」を理念に掲げ、2020年半ばの運用開始を目指している。
ブロックチェーンを非金融分野に適用する動き(「ブロックチェーン3.0」)も加速している。製品の製造、流通、販売過程の追跡や、シェアリング事業における提供者、利用者の評価情報の記録、著作権や資産の管理など、その適用領域は多岐にわたる。
ブロックチェーンの国内潜在市場規模は67兆円との試算もある。とはいえ、「ブロックチェーン3.0」はまだ本格運用に至っていない。大手企業が導入したかのような報道も、その実は期間限定のPoC(Proof of Concept、概念実証)がほとんど。「なぜブロックチェーンでなければならないのか」の不明確な、ブロックチェーン先進企業であることを社外に訴求するためのPoC、手段が目的化したPoCも少なくない。
「分散型台帳技術(DLT, Distributed Ledger Technology)は、数あるデータ管理技術のひとつ。既存技術の完全代替品ではない。(1)相互信頼関係のない複数組織が、(2)中央にデータ一元管理者を置くことなく、(3)構造化されたデータを共有し、(4)書き換えつつ、(5)トランザクション間のつながりも記録すること、が求められない限り、ブロックチェーンは最適解でない。既存技術の親和性が高い領域にブロックチェーンを無理やり適用する「取り組み自慢」はそろそろやめにしよう。(図A1参照)
ブロックチェーンのユースケースとしてもうひとつ注目されるのが、「地域仮想通貨」。20年前の1999年、景気浮揚策として全額国費補助で発行された地域振興券に端を発し、現在、国内には600超の地域通貨があるといわれる。使用可能エリアの狭さ、使用可能店舗の少なさ、といった利用者の不便さに加え、偽造リスクや管理コストの高さといった発行体の悩みもあり、2000年代後半以降、ブームは下火であったが、近年、ブロックチェーンの耐改ざん性や管理コストの低さに活路を見いだし、仮想通貨として再脚光を浴びている。積極的な加盟店開拓、住民税や固定資産税の納付手段化などにより、利便性も向上しつつある。
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明治学院大学 経済学部准教授