連載
» 2019年12月18日 07時15分 公開

非金銭価値の流通するトークンコミュニティー〜評価経済社会で輝く仮想通貨〜視点(2/2 ページ)

[田村誠一,ITmedia]
Roland Berger
前のページへ 1|2       

 それでも、地域仮想通貨は視界不良が続く。「発行体の論理」先行の印象がぬぐえないからだ。地域外への通貨流出を防ぎたいという想いは理解できるが、利用者が当該地域通貨を利用しなければならない道理はない。観光目的の訪日外国人にとってみれば、なおさらだ。利用促進のため、地域通貨でしか購入できない商品開発に力を入れる向きもあるが、地域を振興したいのか、地域通貨を振興したいのか。本末転倒と言わざるを得ない。

決済手段戦国時代

 令和に入り、決済手段は戦国時代の様相を呈している。強制通用力を持つ「法定通貨」に加え、キャッシュレス決済を促す「クレジットカード」「電子マネー」「QRコード」が乱立。POS連携強化などを通じ、「個」の大量購買データ獲得競争を繰り広げ、企業の販促手段に端を発する「企業通貨(ポイントやマイレージ)」との間でも戦線を拡大しつつある。ブロックチェーン陣営からは、ビットコインに代表される暗号通貨、投機性を極力抑えて法的通貨に挑戦状を突き付けた「Libra(リブラ)」の登場。

 翻って、地域仮想通貨は汎用性、投資効果、販促効果の全てで劣後するうえ、その多くは自治体予算頼み。事業経済性を無視した取り組みに持続性はない。今こそ、改めて問い直そう。なぜ地域なのか。なぜ仮想なのか。なぜ通貨なのか。思い切った発想転換が必要だ。

法定通貨で測れない「価値」を測る

 世の中は、貨幣価値社会とパラレルに、無数のコミュニティーが存在する。金銭で測れない価値であふれている。SNSの「Like!(いいね)」もその一つ。決済手段には「売り手」と「買い手」しか介在しないが、価値観を共有するコミュニティーには、「賛同者」「評価者」「共有者」など多様な当事者が存在する。社会的欲求、承認欲求、自己実現欲求に駆り立てられた百人百様の個性が共存する。

 仮想通貨(トークン)は、そんな非貨幣価値社会における尺度に最適だ。熱量の高いコミュニティーでは独自トークンが高密度に飛び交い、強い個性にはさまざまなコミュニティートークンが通過する。貨幣価値社会で認知されづらかった価値が可視化され、埋もれた個性の発掘が容易になる。スマートコントラクト(ブロックチェーン上で契約を自動実行する仕組み)を実装するイーサリアムのカスタムトークン(ERC20トークン)などを活用すれば、保有者ごとに使用目的を限定するなど、設計の自由度も高い。

 ブロックチェーンは、貨幣価値社会と非貨幣価値社会の並立する未来にこそ、より一層輝くに違いない。(図A2参照)

著者プロフィール

田村誠一(Seiichi Tamura)

外資系コンサルティング会社において、各種戦略立案、及び、業界の枠を超えた新事業領域の創出と立上げを数多く手掛けた後、企業再生支援機構に転じ、自らの投融資先企業3社のハンズオン再生に取り組む。更に、JVCケンウッドの代表取締役副社長として、中期ビジョンの立案と遂行を主導、事業買収・売却を統括、日本電産の専務執行役員として、海外被買収事業のPMIと成長加速に取り組んだ後、ローランド・ベルガーに参画。


前のページへ 1|2       

Copyright (c) Roland Berger. All rights reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆