サプライウェブ――新たなプラットフォームビジネスの可能性視点(1/2 ページ)

固定的な「チェーン=鎖」ではなく、あらゆる調達先・納品先と自由につながることができる「ウェブ=クモの巣」への進化こそが、「サプライマネジメントの未来の姿」なのだ。

» 2020年03月09日 07時13分 公開
[小野塚征志ITmedia]
Roland Berger

「チェーン=鎖」から「ウェブ=クモの巣」への進化

 サプライチェーンマネジメントとは、調達・生産から販売に至るまでの供給のプロセスを中心に、企画・設計、マーケティングなどの機能も含めた全体最適を実現するための手法である。自社のみならず、調達先や納品先とも連携することで、究極的には素材・部材から小売までの全てを対象に最適化を図ることが望ましい姿といえる。

 BtoBの取引関係は総じて固定的である。自動車業界であれば、Tier2はTier1に、Tier1は自動車メーカーにという具合に、継続的な調達・納品関係の中で完成車が製造され、系列ディーラーにて販売される。家電業界は、自動車ほど固定的ではないが、サプライヤーから家電メーカー、家電メーカーから家電量販店という供給のプロセスに大きな変化はない。自動車や家電以外の業界においても、「調達先・納品先が毎日のように変わる」「その多くは新規取引先である」という会社は珍しい。だからこそ、調達先・納品先と連携を図ることも可能なわけだが、Industry 4.0を始めとする事業環境変化の先を見据えるに、この関係性は徐々に崩れることが予想される。

 例えば、自動車の電動化が進めば、エンジンを付加価値の源泉としていた自動車メーカーは、単なる「組み立て屋」に成り下がる可能性もある。カーシェアが格段に普及し、自動車は「買うもの」ではなく「都度利用するもの」になったとき、現状のディーラーネットワークは維持できないだろう。

 家電は、BTO(Build to Order)での購入が増えると想定される。家のレイアウトや壁紙の色などに合わせてカスタマイズできるようになる。そうなれば、家電の物流は「工場や流通加工センターから自宅までの直送」が基本となる。

 要するに、どの業界においても、今までとは異なる供給のプロセスが出現するからこそ、最適な調達先・納品先を柔軟かつ機動的に選択できることが重要となる。固定的な「チェーン=鎖」ではなく、あらゆる調達先・納品先と自由につながることができる「ウェブ=クモの巣」への進化こそが、「サプライマネジメントの未来の姿」なのだ。

サプライウェブへの進化

サプライウェブの基本構想

 サプライウェブの基本構想は、「あらゆるプロセスがつながること」と「本来必要のないプロセスがなくなること」にある。

 「あらゆるプロセスがつながること」とは、川上から川下への従来的なつながりのみを指しているわけではない。XaaSが拡大すれば、「買う→捨てる」に加えて、「利用する→返す」がより一般化する。川下と川上をつなぐリバース・ロジスティクスの重要性は顕著に高まるだろう。

 企業間の垣根を超えた水平的なつながりも拡大する。より多くの調達先・納品先と自由につながるということは、入出荷のロットが小さくなること、結果として物流が非効率化することを意味するからである。トラックや倉庫といった物流アセットを他社と共用することで、規模の経済性を確保しようとする動きが広がるはずだ。

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