そして、「本来必要のないプロセスがなくなること」で、つながることの価値が大きくなる。例えば、「発注」しないとモノが届かないという状況があるために、必要以上に注文してしまったり、欠品が生じたりする。サプライウェブ全体がつながっていて、常時自動的に補充・最適化されるのだとすれば、そのような手間や無駄はなくなる。
同様に、調達先と納品先の物流・商流データが広く共有され、モノの所在を相互に把握できるようになれば、モノを受け取った際の「検品」や、在庫の数量を把握するための「棚卸」は不要となる。納品先やその先のエンドユーザーの動向を把握し、注文を受ける数量を事前に推定できれば、「在庫」を大幅に圧縮することも可能だろう。
インターネットを「情報をつなぐ仕組み」と捉えるなら、サプライウェブは「モノと情報をつなぐ仕組み」である。「あらゆるプロセスがつながること」と「本来必要のないプロセスがなくなること」を実現できれば、インターネットのように、広く多くの事業者にアクセスされるようになるはずだ。つまり、「モノと情報をつなぐ仕組み」をプラットフォームとして提供することへの潜在的な需要は極めて大きいといえる。
もちろん、情報だけではなく、モノもつなぐということは、インターネットを構築するよりもはるかに多くの投資を要する。とはいえ、GAFAに代表されるITプラットフォーマーは、20年足らずの間に、ゼロから世界有数の時価総額を誇る巨大企業へと成長を遂げた。部分的とはいえ、現行事業にてモノと情報をつなぐ役割を担っている物流会社や商社、流通事業者であれば、ゼロからのスタートではない。20年先を見据えた戦略的な投資を実行できれば、サプライウェブプラットフォーマーとして飛躍的な成長を遂げることも夢ではないだろう。
小野塚 征志(Masashi Onozuka)
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士総合研究所、みずほ情報総研を経て現職。
サプライチェーン/ロジスティクス分野を中心に、長期ビジョン、経営計画、成長戦略、新規事業開発、M&A戦略、事業再構築、構造改革等を始めとする多様なコンサルティングサービスを展開。2019年3月、日本経済新聞出版社より『ロジスティクス4.0―物流の創造的革新』を上梓。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授