すぐやる人になるきっかけは「行動イノベーション」経営者からオリンピック選手まで行っている「すぐやる」習慣の極意(1/2 ページ)

どんなに小さくても行動すれば、PDCAサイクルを最速で回すことにもつながり、より良い結果を生み出すこともできる実際のところ何から始めたらいいのか分からないし、なかなかやる気にならない……。

» 2021年01月06日 07時05分 公開
[大平信孝ITmedia]

 業務改善や商品・サービスの価値向上に取り組みたいのに、つい行動を先延ばしにしてしまう。こうした経験は誰でもあるでしょう。どんなに小さくても行動すれば、PDCAサイクルを最速で回すことにもつながり、より良い結果を生み出すこともできます。確かにその通りですが、コロナ禍で社会情勢の流れも読みづらいなか、実際のところ何から始めたらいいのか分からないし、なかなかやる気にならない……。そんな人のために、この連載ではアドラー心理学をベースとした「すぐやる」習慣の極意、「行動イノベーションメソッド」を紹介します。第1回は、「行動できない本当の原因」についてです。

「行動しない理由」は、「原因」ではなく「目的」を追求すべし

『本気で変わりたい人の行動イノベーション』

 実は、「行動しない(できない)理由」を探すのはとても簡単です。「時間がない」「予算が足りない」「過去に成功事例がない」など、無数に挙げることができます。では、いったいどうすれば、重要なことを先延ばしせずにすぐやる人になれるのでしょうか?

 アドラー心理学は、フロイト、ユングと並び「心理学の三巨頭」と称されるアルフレッド・アドラー博士(1870-1937)が創始しました。最大の特徴は、「原因論=なぜダメなのか? どこがダメなのか?」ではなく、「目的論=どうすれば今よりもっとうまくいくのか?」を考え、実行するところにあります。

 原因論的アプローチでは、うまくいかない原因を見つけ、取り除くか改善することで解決を図ります。仕事において原因論的アプローチが役に立つ場面は数多くありますが、原因が特定できれば、あらゆる問題が解決できるわけではありません。なぜなら、過去におこったことなどは自分1人では変えられないこともあるからです。

 一方、目的論的アプローチでは、原因の違いに関係なく行動できるようになるための方法として、目的にフォーカスします。車の運転では、目的地を設定すればカーナビが作動します。同様に、目的が明確になれば、私たちは自ずと動き出します。また、目的が明確になれば、そこに至るプロセスが1つに限らないことにも気付くことができます。

自分の中に隠れている「欲望」を知る

 目的を見つけ出すための最初のステップとなるのが、自らの「欲望」を知ること。欲望というと悪いイメージを持つ人もいるかと思いますが、ここで言う欲望とは、自分の奥底にある純粋な気持ち、心を揺さぶるようなワクワク感のきっかけになるものです。もし、真剣に悩んでいるにもかかわらず、問題が解決しないのなら、「本当はどうしたい?」と、自身に問いかけてみてください。現状を打開するヒントが見えてくるはずです。

 先延ばしをやめて今すぐ行動するために、目標の細分化や明確化に必死になる人がいます。ところが、目標の明確化、細分化までは、すぐに行動できても、いざ実行段階となると、進まないことが多々あります。特に仕事では、重要だけれど緊急ではない仕事、例えば人脈づくり、専門分野の勉強、業務の見直しと改善、育成・指導などは、たとえ数値目標があったとしても、つい先延ばししてしまうことがあります。

 なぜ、いくら目標を数値化し、さらに細分化してもなかなか行動に着手できないのでしょうか。

 そこには、「欲望」がないからだと私は考えています。人は、自分が本当にやりたいことならいくらでも頑張れる、続けられる、成長できるという性質を持っています。

 脳には大脳辺縁系という本能行動や情動に重要な役割を担っている古い脳と、この大脳辺縁系の上に新しい脳、大脳新皮質があります。古い脳は生命維持のために働き、感情と行動をつかさどる。新しい脳は、状況に応じて適切な行動をするために高度な学習能力があり、言語をつかさどるが行動はつかさどらないのです。

 つまり、いくら目標を明確化しても、言葉レベルでの目標であれば行動へはつながらないのです。「分かっちゃいるけどできない」というのがこの状態です。「感動」という言葉はあっても「知動」という言葉はありません。人は理屈ではなく、感情で動くのです。行動したいなら、感情と行動をつかさどる古い脳にアプローチする必要があります。

 このように、「欲望」という情動を使えば、いつでも自在に脳にアプローチできます。欲望とは考えるものではなく、感じるもの。それだけに把握するのが難しいものでもあります。そこで私は、「欲望=頭の声、体の声、心の声」と捉え、この3つの声を別々に感じ取りながら「本当はどうしたい?」と自分に問いかけるアプローチをおすすめしています。

★頭の声……普段考えていることで、○○しなければならないといった義務感。

★体の声……体の状態やコンディション。肩がバキバキだ、喉が痛いなど。

★心の声……感じていること、気持ち。○○したいという欲求。

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