DX推進の鍵として注目されるデータ駆動型経営。根幹にあるのは全件全量全粒度データ分析に基づく意思決定。
DX(Digital Transformation)推進の鍵として注目されるデータ駆動型経営。根幹にあるのは全件全量全粒度データ分析に基づく意思決定、すなわち“DDDM(Data Driven Decision Making)”だ。「大量の事実」に基づく帰納解は、「事実に近い何かの一部」に基づく演繹解を凌駕(りょうが)する(注1)。
ここに疑いの余地はない。IoT(Internet of Things)を通じて実世界から得られたデータを機械学習/AIで分析・解析し、その結果を実世界にフィードバックするCyber Physical System(CPS)は、全ての産業に事業モデルの革新をもたらしている。
事実、好業績企業は業界平均に比してDDDMを2倍実践、5倍速く意思決定するともいわれる。DMP(Data Management Platform)、MA(Marketing Automation)、SFA(Sales Force Automation)、CRM(Customer Relationship Management)、Web解析ツールなど、データ駆動型経営を支援するツールもさまざまだ。
ただし、DDDMの対立概念としてKKD(勘、経験、度胸)を位置付ける論調があるとすれば、それは大いなる誤解だ。DDDMの本質は中途半端な仮説検証思考(演繹解)に対する警鐘であり、KKDの否定ではない。KKDなくして大勝利などあり得ない。
注1:「視点:データ資本主義がもたらす人間中心の社会」参照
誤解をひもとくべく、数学の世界へ。数の歴史をひもとくと、「自然数」の誕生、「分数」の発見(「有理数」の完成)、「無理数」の発見(「実数」の完成)を経て、16 世紀、ジェロラモ・カルダーノの著書に初めて「虚数(imaginary number)」(2乗するとマイナスになる数)が登場。追って18 世紀、レオンハルト・オイラーが虚数単位 “i” を定義した。
しかし、その後も虚数の存在はなかなか受け入れられなかった。なぜなら、虚数はimaginary number。想像が難しい。どうすれば虚数を視覚的に理解できるのか。18〜19世紀にかけて、カール・フリードリヒ・ガウスらは考えた。“虚数は数直線上のどこにもない。ならば、数直線の外、つまり原点から上方向へのばした矢印を虚数と考えればよいのではないか”。実数の数直線という1次元から、虚数の数直線を掛け合わせた2次元に飛び出すことで、目に見えないはずの、実数と虚数を足し合わせてできる「複素数」の世界を視覚的に表現した。これが複素平面(ガウス平面)。(図A1参照)
翻ってデータ駆動型経営。VUCA(注2)の時代、企業を取り巻く環境は日々刻々と変化し、一寸先は常に闇。常に新たな競争軸を探索し続けなければならない。実績データに基づく予測や最適解が正解となる保証はない。「イノベーションのジレンマ」(“Innovator's Dilemma”)の打破、「両利きの経営」("“”Ambidexterity”)が求められるゆえんだ。
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明治学院大学 経済学部准教授