ドラッカーが言っていることは、決して心の持ち方だけではない。「上司をマネジメントする」ために行うべきことを具体的に教えてくれている。この連載では、5つのことに絞って伝える。その5つを知っているかどうかで、上司のあなたへの評価は必ず変わるはずだ。その5つとは次の通りだ。
1:上司リストを作る
2:上司にアドバイスを受ける
3:上司の強みを生かす
4:報告の仕方を決める
5:上司を不意打ちから守る
ドラッカーはこう言っている。
“第1に行なうべきことが、上司リストの作成である。いまや上司とは、同じ組織内の上役だけではなく、成果に影響を与える人のことである“ピーター・ドラッカー
第1は上司リストをつくることだ。
「上司は1人だ。リストをつくっても一行で終わってまう」あなたは今、そう思ったかもしれない。多くのビジネスパーソンから話を聞くと、社内でプロジェクトが何本も動いていて、それらのプロジェクトに同時に関わっているのが当たり前だという。
日常業務の報告は組織上の上役だが、日常業務と同時並行で動いているプロジェクトの報告先は、そのプロジェクトリーダーだ。このように、報告先や相談する相手は組織上の上役だけではなくなっている。
従って、いまや上司とは、人事権を持つ社内の上役だけでなく、自分の仕事に影響を及ぼす人、成果をあげる鍵を握る存在、全て上司と見立てて仕事をしていなければならない。
では、ドラッカーの言う通り、自分の仕事に影響を及ぼす人、成果をあげる鍵を握る人全てをリストアップしていこう。報告すべき対象となる人、あなたに指示を出す人、関連会社や取引先であなたの仕事の良しあしを感じたり、感想を言ってくれたりする人(人事評価ではなく、あなたを評価する人)、仕事上、頼ったり相談したりする人は、全てあなたの上司リストに該当する人だ。
事業目的を共有するグループ会社の担当者、事業を共に進めている関連会社の担当者、事業を共に進めている協力会社の担当者、事業を共に進めている重要な取引先も自分の仕事に影響を及ぼす人、成果をあげる鍵を握る存在だ。それらの人も上司と見立てて、リストアップしていこう。リストアップしたら、どうするか。それは、次回お伝えする。
私も実際、これまでに何回か上司リストを作成してきた。1年に1回やると、驚くほどリストアップされる名前が変わる。やっている仕事は同じでも、実はわずか1年で関わる人が大きく変わっていることを実感できるはずだ。
今回は、「上司リストを作る」というテーマで、ドラッカーが教える「上司から評価される仕事術」についてお伝えした。次回は具体的な実務に一歩踏み込んで、「上司にあることについてアドバイスを受け、上司の強みを生かす」という内容をお話する。
ドラッカーが教える「上司から評価される仕事術」を身につけることによって、あなたの評価が変わる。あなたの評価が変わればあなたの年収が変わる。あなたの年収が変われば、あなたの経済力が変わる。あなたの経済力が変われば、人生に良い影響をもたらす。あなたはそんなすてきな可能性を1つ増やすことができる。
大事なことはお金でもないし、出世でもない。上司をマネジメントするスキルを身につけることによって、結果として、自分の仕事を進めやすい状態をつくり出すことになり、より成果をあげられるようになる。何より、日々、仕事を通じて、社会のお役に立てている喜びが実感できること、それが一番重要だ。私は実際、そんな喜ばしい人たちを大勢見てきた。あなたもそうなることを私は願っているし、そうなると確信している。
ドラッカー専門の経営チームコンサルティングファーム トップマネジメント
東京都渋谷区出身。ドラッカーコンサルティング歴約33年。外資系コンサルティング会社勤務時、企業向けにドラッカーを実践する支援を行う。中小企業の役員と上場企業の役員を経て、ドラッカーの理論に基づいた経営チームをつくるコンサルティングを行う、トップマネジメントを設立。現在は上場企業に「経営チームの研修」「経営幹部育成の研修」「後継者育成の研修」を行っている。
著書に『ドラッカーが教える最強の後継者の育て方』(同友館)、『ドラッカー5つの質問』(あさ出版)、『新版 ドラッカーが教える最強の経営チームのつくり方 』(同友館)、『日本に来たドラッカー 初来日編』(同友館)、『ドラッカーが教える最強の経営チームのつくり方 』(総合法令出版)、『ドラッカーのセミナー』(Kindle)、『ドラッカーが教える最強の事業承継の進め方』(Kindle)がある。主な連載に『ドラッカーに学ぶ成功する経営チームの作り方』(ITmedia エグゼクティブ)がある。ほか多数。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授