皆さんは、睡眠を改善するために、なにか工夫や投資をしているだろうか。オリンピック選手、日本代表選手の睡眠改善もサポートした睡眠のプロに、ベストな睡眠を手に入れる方法を学ぶ。
ライブ配信で開催されているITmedia エグゼクティブ勉強会に、LIFREE 共同創業者でスリープコーチの角谷リョウ氏が登場。2012年より、ビジネスマンのパフォーマンス向上に特化した生活習慣改善コーチングを120社、6万5000人以上に提供してきた実績と、2022年3月に発行された著書『働くあなたの快眠地図(フォレスト出版)』の内容に基づいて、「睡眠のプロが教える、あなたにベストな睡眠を手に入れる方法とは“快眠地図の使い方”」をテーマに講演した。
ここ数年、睡眠関係の商品やサービスが劇的に売れている。例えば、「ヤクルト1000」は社会現象にもなり、ニトリの枕は約500万個売れている。また最近では、多くの企業がビジネスパーソンの睡眠改善にかなり力を入れている。なぜいまビジネスパーソンに「睡眠」が重要視されているのか。ビジネスパーソンが睡眠を改善すべき理由には、以下の3つがある。
(1)病気や重大ミスのリスクを下げるため
睡眠が不足すると、交通事故や病気などのリスクが高まる。居眠り運転が5倍、交通事故は7倍に増えるといわれている。
(2)周りとの関係性悪化を防ぐため
リーダーが睡眠不足だと、周りの人との関係が悪化し、エンゲージメントが低下するという調査報告がある。睡眠が不足していると、相手からは「交流したい」評価が激減し、「相手が敵意を持っている」と思い込みやすくなる。
(3)心が折れないようにするため
睡眠が十分な場合と睡眠が不足している場合では、うつ病の発症リスクが40倍になるといわれている。普通の睡眠と不眠では、リスクは約3倍といわれている。
睡眠に関して日本は、世界でワースト1位といわれている。角谷氏は、「約1万人にアンケートを実施した結果、不眠レベルが危険のレベルに入るとうつ病の発症リスクも危険レベルになるという相関性があるといわれています。基本的には、睡眠、食事、運動の全てに関係性がありますが、睡眠の相関性が圧倒的に高くなっています」と話す。
睡眠には、「良い睡眠」「普通の睡眠」「悪い睡眠」があるが、エプワース睡眠尺度とアテネ不眠尺度で判定すると、悪い睡眠(睡眠不調)の人は10〜30%程度。どちらかのテストで「危険」と判定されると睡眠不足である。ウェアラブルデバイスでも測定できるが、メーカーによって誤差がある。だいたい70点以下であれば睡眠不調である。
「良い睡眠の人は10〜30%程度。良い睡眠の明確な基準はありませんが、目覚めが良い、疲れがとれている、深い睡眠が2時間以上、ぐっすり寝られている、日中(昼イチは除く)眠くないなどの条件を満たせば、基本的には快眠といわれています。スコアでいえば、80点以上。普通の睡眠の人は50〜60%程度。睡眠スコアが70点台の人です」(角谷氏)。
日本は、普通に暮らしているだけで悪い睡眠になりやすいといわれているが、理由は以下の3つである。
(1)日本の夜は明るい
日本の夜は、欧米に比べ40%程度明るいという調査報告がある。公共交通機関もコンビニも覚醒するレベルの明るさ。夜間に明るい光を浴び続けると、悪い睡眠になることから注意が必要になる。
(2)日本人は不安遺伝子の保有率が高い
心配ごとや気掛かりなことがあり、なかなか寝られないことはないだろうか。これは、不安遺伝子の保有率が日本人は80%と高いからである。不安遺伝子により、よい仕事をするというメリットもあるが、悪い睡眠にもなってしまう。
(3)日本人は座る時間が長い
日本人は、座っている時間が長いという調査結果がある。座る時間と睡眠には密接な関係がある。1日に歩く距離が4000歩以下だと悪い睡眠になりやすく、2000歩以下だとほぼ良い睡眠にはならない。
ベストな睡眠時間は何時間だろうか。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針2014」には「人それぞれ」と記述してある。睡眠時間が長ければよい睡眠だと思うかもしれないが、世界で最も寝ている国1位の南アフリカは平均寿命の世界ランクが151位、2位の中国は53位、3位のインドは125位である。
一方、世界で最も寝ていない国の1位は韓国、2位は日本、3位はノルウェーだが、平均寿命の世界ランクは、韓国が11位、日本が1位、ノルウェーが15位である。日本で最も寝ている都道府県の上位も、平均寿命の国内ランクでは下位になっている。この結果だけ言い切るのは多少強引だが数万人以上の睡眠をサポートしてきて言えることは睡眠は時間より質が最も重要ということである。また睡眠の質とは睡眠の深さである。いわゆるノンレム睡眠だが、睡眠の深さは脳波で決まる。
角谷氏は、「質の悪い睡眠で長く寝ても、良いことはまったくありません。ベストな睡眠時間を知るためには、質の高い睡眠により、朝すっきりと起きられる、日中眠くない状態を作ることです。次に、睡眠時間を30分ずつ減らしていきます。朝すっきり起きられなくなり、日中眠くなったら30分戻し、それがベストな睡眠時間になります」と話す。
平均睡眠時間は年齢を重ねるごとに変化し、20代で8時間弱、20〜40代で7時間、50代で6時間、60代で6時間弱と報告されている。40代後半から50代前半で、睡眠の悩みは逆転します。若い人は8時間櫃湯なのに6時間しか寝られないので常に睡眠不足です。一方、高齢になると8時間寝たいのに6時間で目が覚めてしまう。
自分にベストな睡眠時間を知る方法は、以下の3つとなる。
(1)質の高い睡眠を取れるようにする
(2)朝や日中を快適に過ごせるようにする
(3)少しずつ睡眠時間を減らしていく
多くの本やネットに情報がある通り、寝る前の習慣で睡眠の深さが決まる。深い睡眠に入れる夜の習慣のポイントは、以下の3つである。
(1)光とうまく付き合う
寝る前に一般的な500ルクスの光を1時間浴びるとメラトニンが約6割に減ってしまう。そこで寝る前1時間は、照度を200〜300ルクス程度に落とす。また朝の覚醒や日中の仕事時には白系の照明がよいが、夜は黄色系の方が快眠できる。ブルーライトは有害ではないが、睡眠時間が遅れたり、睡眠の質が下がったりするので注意が必要。時間になるとスマートフォンの画面が暗くなったり、使えなくなったりする設定で対応する。
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明治学院大学 経済学部准教授