(2)体をオフモードに入れる
1分間ストレッチで、睡眠を90%以上改善できる。また不眠改善は4000歩、深い睡眠を増やすには7000歩のウオーキングをする。特に夜のウオーキングが効果的である。さらに41度以下のぬるいお風呂は確実にリラックスできる。
(3)脳をオフモードに入れる
寝具を変えても、ストレッチをしても寝られない場合、日記やジャーナリングが睡眠薬に匹敵する効果を発揮する。またハーブティーやヤクルト1000など、脳をリラックスさせる飲み物も有効。さらにラベンダーや木の香りなどのアロマも、鼻腔から脳を直接リラックスさせることができる。
「睡眠改善をする場合、早寝を考えがちだが、実は早起きが快眠にとって有効です。朝日を浴びるとセロトニンが出ますが、セロトニンは約15時間かけてメラトニンに変わり、快眠が可能になります。朝はコルチゾールが放出され、もっともストレスに強く、もっとも重要な仕事に向いている時間帯でもあります」(角谷氏)
自分でベストな朝の状態を作るためのポイントは、以下の3つである。
(1)目覚め方の工夫
人間の身体には、体内時計があり、これをいかに起こすかがポイント。目覚め方でもっとも良いのは、太陽光による目覚めである。太陽光がベストだが、強めの白い照明でも効果がある。また目覚まし時計の音でも、目覚めがまったく違う。アラーム音はもっともストレスが高く、次に楽器や音楽で、もっとも良いのは自然の音である。
「起きる20分前に小さい音を鳴らすと浅い睡眠になり、20分後にすっきり起きられます。眠りが浅い時に起こしてくれる『熟睡アラーム』などのスマホアプリも有効ですが、効果があるのは2人に1人程度です。前日の夜、起きる時間を唱和すれば、7日目には8割の人がその時間に起きられるようになったという広島大学の研究もあります」(角谷氏)。
(2)食事(胃の中に入れる)
食事をして、胃が動くと腸が動き、腸が動くと脳に刺激が伝達される。これにより、身体の全てが動くようになる。朝、コップ1杯の水(白湯がベスト)を飲むのが効果的だが、起きてすぐは口の中に雑菌がいるので、水を飲む前にうがいすることが必要。朝食にタンパク質を取ると、頭がよく働くようになる。コーヒーは起きて1時間後に飲むと効果が午前中続く。
(3)動く(体温を上げる)
ベストはウオーキングである。5分のウオーキングでも脳が活性化する。歩かずにテレワークをするのは、本来の力を発揮できない。掃除や熱いシャワーも効果的である。
梅雨時期は、「低気圧」「高湿度」「日照時間が少ない」というトリプルパンチの対策をする。梅雨時期の高湿度対策として、早々にクーラーを活用することである。特にドライ機能は、梅雨時期のための機能といえる。また天気病(低気圧)対策として、くるくる耳マッサージがおすすめである。「頭痛ーる」というスマホアプリも有効。サプリメントでビタミンDを摂ることが有効だが、太陽が出たら外に出て日に当たるとよい。
角谷氏は、「夏はクーラーを使った方が快眠できます。ただしクーラーをつけていると、朝体温が上がらないので起きられません。そこで朝方に切れる設定にしておきます。扇風機との併用が効果的で、扇風機はDCコンバーターが静かなのでおすすめです。配偶者や子どもなどと一緒に寝る場合、最適温度が3度以上違えば別部屋にし、3度以内なら掛け布団で調整します」と話す。
働き方改革は、順調に推進されており、残業60時間以内は9.3%から6.5%に改善され、目標の5%が達成できそうな状況である。一方、睡眠で休養が取れている人の目標は15%だが、18.4%から22.6%に悪化している。メンタルと睡眠には強い相関関係があり、うつ病による休職者も、ストレススコアも過去最高を更新している。
もっとも問題なのは、本人に自覚がないこと。3人に1人が治療が必要なレベルなのに、7割が自覚していない。認知行動治療や光治療などもあるが、こうした治療には半年以上の時間がかかる。自覚しても、CPAP療法か投薬による対応になり、本質的な改善にはつながらない。もっとも有効な対策は、会社が社員の睡眠改善をサポートすることである。
角谷氏は、「睡眠を改善すれば、社員のメンタル状態やQOLが向上します。うつ病による休職や退職により、1人あたり1490万円のコストがかかりますが、睡眠改善でうつ病が減り、ストレス数値の平均点も下がります。さらに健康推進担当者のモチベーションが上がります。睡眠改善で、経済損失が減り、事故や病気も減ります。会社が睡眠をサポートすることで、社員がよくなり、会社がよくなり、社会がよくなる“三方よし”になります。睡眠改善は、健康経営の最善の選択なのです」と締めくくった。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授