「Why」がきちんと腑に落ちないと、なかなかやる気になりません。その点では、今の若い経営者は皆さんそれぞれに、こうしたテーマをしっかり持っています。
支援型リーダーは「目的やミッション・ビジョンをいかに共有するか」ということを真っ先に考えます。
ITバブル期の経営者には「上場して、ひともうけして、フェラーリ買って」という人もよく見かけました。いわゆる「上場ゴール」を公言するような経営者は、最近激減したと感じます。そういう経営者がいてもよいと思いますが、いまはこうした経営者についていくという人もいませんから、そのスタイルで成功することはなかなか難しいでしょう。
会場からの質問で、「会社としてのビジョン・目的が具体的かつ明確ではないがゆえに、一見、リーダーシップ・スタイルが“調整型”であり“支援型”に見えているということはないでしょうか?」というものがありました。
これは、「調整型」ではありえますが、「支援型」ではありえません。支援型は必ず、「目的やミッション・ビジョンをいかに共有するか」ということが真っ先に来るのです。
また、「『4.0』を目指したいのですが、ティール組織には少し違和感を覚えます。『4.0』とティール組織は同じ定義でしょうか?」という質問もありました。
これについては小杉さんから、ティール組織というのは「3.0」型の組織の1つの在り方と位置付けられるとのコメントがありました。
「4.0」というのはまた位相が違う話で、階層や上下関係があったとしてもいいのです。一人一人が自律して、一人一人がリーダーシップを発揮するということを指しているのが「4.0」。
ちなみに僕自身は、企業単位で語られるティール組織については反対派なのです。チーム単位であればティールで成り立つと思いますが、事業部や企業全体となると、すごく無理があり、先頭なしで組織が望ましい形に動くだろうかという疑問です。
その点で小杉さんが、ティール組織というのは「3.0」型の組織の1つの在り方だと解釈したことにはうなずけます。
小杉さんは、こう言います。
「指揮者のいない“オルフェウス室内管弦楽団”って、日本でも注目されましたよね。今は組織論としてはまったく注目されなくなりましたが、あれは、一人一人がプロフェッショナルで、誰がリーダーシップを取ってもおかしくない自覚と技量を持っていて、そういう人たちの集団だから成り立つのであって、企業では難しい。ティール組織については、この話に似ているなと思いました。通常は組織が必要だし、命令系統も必要。そうじゃないと普通の企業は機能しません。全員がプロフェッショナル集団じゃない限りですね。そう思います」
だから、ユニット単位で自律的に動けることは、すごくいい。一方、それをちゃんとオーガナイズしていかないと、どの企業も全体として機能していくのが難しい。こう思います。
小杉 「ティール組織」の)提唱者はフレデリック・ラルーという、マッキンゼーのコンサルタントですよね。私は、概念的な話なのかなと思いました。なんでそんなにもてはやされたのかよく分からなかった。
井上 うーん。少しブームは去った感じですかね。
小杉 そうですね。もうあまり言われないですよね。
井上 何か考えるきっかけになるという意味ではいいと思います。
小杉 そうですね。
井上 私たちが言うのも変かもしれませんが、人材領域、人系・組織系に限らず、バズワードが出てきた時にコンサルは一生懸命流行らせますよね。それでフォーマット化して「導入しませんか」と売り込むという(笑)。
小杉 そうですね。
井上 それもいかがなものかなと(笑)。バズワードに表面的に踊らされないようにしたほうがいいですね。
小杉 おっしゃるとおりです。
株式会社経営者JP 代表取締役社長・CEOに
早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。その後、現リクルートエグゼクティブエージェントのマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。2万名超の経営人材と対面してきた経験から、経営人材の採用・転職支援などを提供している。2021年、経営人材度を客観指標で明らかにするオリジナルのアセスメント「経営者力診断」をリリース。また、著書には、『社長になる人の条件』『ずるいマネジメント』他。「日本経済新聞」「朝日新聞」「読売新聞」「産経新聞」「日経産業新聞」「週刊東洋経済」「週刊現代」「プレジデント」フジテレビ「ホンマでっか?!TV」「WBS」その他メディア出演多数。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授