(1)中間管理職は縦の関係で上司は絶対だったが、人材が流動化する現在、縦の関係よりも横の関係を広げていく。
(2)部下の時間と業務を管理して業績を上げる感覚から、チームの人的資本を伸ばすことで業績を上げる。
(3)部下の弱みを指摘するのではなく、部下の強みを生かしていく。
(4)育成時に自分のコピーを作るのではなく、自分を超える人材を育成する。
(5)部下の出世を後押しするのではなく、メンバー一人一人のキャリアの成功を支援する。
昔から「人が資本」といわれてきたが、これからの時代は「人の資本」をいかに経営に生かし、レバレッジをかけるかが重要になる。その中心となるのが、これからの時代の管理職であるTMOである。
人的資本を生かすリーダーになるためにTMOには、(1)キャリア支援力、(2)強み発見力、(3)仕事アサイン力、(4)チームビルディング力、(5)人材獲得力、(6)オンボーディング力、(7)全体俯瞰力の7つの能力が求められる。
(1)キャリア支援力
これまでのキャリア支援は、部下を役職に昇格させること、給料が上がること、会社を辞めないことなどが前提だった。これからのキャリア支援は、関心のある仕事に関わりたい、自分の能力に合った仕事をしたいなど、人によってさまざまな働く動機を支援する力が重要になる。
(2)強み発見力
これまでは、部下の90点をほめるのではなく、残り10点を指摘する管理だった。これからは、部下の強みを客観的に見いだし、それを伸ばすサポートすることで、自発的な貢献意欲やエンゲージメントを高めることができる力が必要になる。
(3)仕事アサイン力
日本企業は、無意識に公平、平等が大事であることを意識し、メンバー全員を平等にと考えてしまいがちである。これからは、一人一人の強みを見いだし、発揮できるように仕事をカスタマイズして提供する力が大事になる。
(4)チームビルディング力
チームの空気を読んで能力を発揮できなくしたり、情報をオープンにすることなく手探りで仕事をさせたりするのではなく、全てが見える状態で、本人が持っている能力をちゅうちょなく発揮できる環境を構築する力が大事になる。
(5)人材獲得力
単に「うちの会社に来いよ」と誘うのではなく、うちのチームで、こういう役割で、こんな貢献をして、こんな成長の機会があると誘わなければ優秀な人材は獲得できない。そこで、いまある人的資本だけでなく、外部の資本をうまく活用する力が重要になる。
(6)オンボーディング力
中途採用したけどすぐに辞めてしまう、即戦力と聞いていたけど全然能力を発揮しないなど、自社のルールにはめ込むだけでなく、本人が持っている資本を最大限に生かせるようにチームもフォーメーションを変え、再活性させる力が大事になる。
(7)全体俯瞰力
BS(貸借対照表)やPL(損益計算書)、データなどを見て経営戦略の把握を把握したり、エンゲージメントサーベイで現状を分析したりなど、会社全体を俯瞰して、何が必要かを見極める力が大事になる。
「まず取り組んでほしいのが(2)強み発見力です。多くの管理職は、自分がもっとも能力が高いと思っていますが、チームには自分が持っていない優れた能力を持つメンバーが必ずいます。例えば、SNSの使い方は新入社員の方が秀でているかもしれません。誰でも強みがあるという意識で見つけに行くことが大事です」(上林氏)
もっとも重要なのは、3人のメンバーがいたときに「1+1+1」が「3」以上になるチームの実現である。そのためには、仕事と会社と個人がつながり、自発的な貢献意欲や主体的な仕事への取り組みを可能にするエンゲージメントが大事になる。ただし、会社と個人の関係が主従関係で、対等でなければ、どれだけがんばってもエンゲージメントはマイナスになってしまう。
上林氏は、「多くのチーム、個人が100%のポテンシャルを発揮できていることは多くありません。何らかの障害で全ての能力を発揮できないのが実情です。本人が持っている能力を、最適なポジションで生かしていくことで100%の能力を発揮できれば成果につながります。そのためには、人事や経営層の理解も必要です。TMOは、メンバー一人一人が自分の人的資本を意識し、それを磨いていく支援をすることがますます大事になります」と話している。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授