必ず訪れる「売り上げ3分の2時代」に生き残るために企業が今からやるべきこと将来の人口減少が売上減少につながらないための秘策とは(1/2 ページ)

政府の推計によれば、日本の人口は、50年後には3分の2になるといわれています。つまり、絶え間ない企業努力をして、50年後も変わらぬシェアを維持できたとしても、人口が3分の2になることで、単純計算で日本での売上が3分の2になるのです。では、そのような時代に向けて企業はなにをすればよいのか。その1つの答えを非効率だらけだった鳥取の不動産会社をDX化で改革し、効率化を実現して成果を上げたウチダレック専務取締役の内田光治氏の著作『仕事のムダをゼロにする 超効率DXのコツ全部教えます。』から抜粋・再編集して紹介します。

» 2023年03月28日 07時06分 公開
[内田光治ITmedia]

システムを導入するだけでは、効率化はできない

『仕事のムダをゼロにする超効率DXのコツ全部教えます』(Amazon)

 来るべき売上3分の2時代に向けて、私がウチダレックで取り組んだのが、非効率だらけだった業務をDXによって効率化させることです。効率化し生産性を上げることで、コストを下げること、また余裕が出ることによって、新たな挑戦をして、売り上げを伸ばすことが大切だと考えたのです。さまざまな苦労もありましたが、「不動産業界初の“週休3日制”の実現」「経費削減率40%」 「ひとりあたりの営業利益2・5倍」などの結果を出すことができました。

 では、DXによってどう効率化を果たしたのか、ただ、単純にシステムを導入すればいいというわけではありません。外側から業務を眺めているだけでは、現場にフィットしないシステムを導入してしまいかねません。現場の業務を理解していないと、使いもしない余計な機能がある割に必要な機能が見当たらないシステムを導入してしまい、いつの間にか現場で活用されなくなるのがオチです。

 現に、それが多くの企業で起こり得るDX失敗事例なのです

 まずは業務プロセスの整理とムダを洗い出し、それを解決できるシステムを導入することが大切なのです。

ムダは当たり前にひそんでいる

 「ムダなことは、当たり前にひそんでいる」これは私が、効率化に取り掛かってみて気づいた、1つのキーワードです。

 ムダを洗い出すときは、あますことなく、全てを「疑う」ことからはじめてください他の会社でもやっているからとか、長年やっているからとか、そういうことは、関係ありません。むしろそういうところにこそ、ムダがひそんでいるのです。

 私がまず、気になったのは店頭や店内に大量に貼り出されている「マイソク(物件セレクトと呼ぶ場合もあります)」でした。マイソクとは不動産業の用語で、物件の価格と概要、写真、間取り図などをまとめた資料のことです。多くの不動産会社で店外に向けて貼り出されている物件の間取りや賃料、所在地などの情報を1枚にまとめた物件情報シートのことです。

 このマイソクの管理は、けっこうな業務負荷なのです。物件情報は毎日更新されますから、新しいものが出ればつくって貼り、決まった物件は探して剥はがす必要に迫られます。

 だからこそ、「何のためにあるのか? これは、いらないんじゃないか?」と思ったのです。

 東京や大阪などの大都市では駅前をたくさんの人が歩いていますから、マイソクを出しておけば買い物や会社帰りになんとなく立ち止まって見てくれます。しかし、弊社のある場所、地方は車社会であり「人が歩いていない」のです。

 ある日、「ムダならやめちゃいましょうよ」というと、「この人はなにをいっているんだ……?」と周囲にけげんな顔をされました。一度だけ試してみましょうと提案しても、なかなかやらない。結局私が我慢しきれず、深夜のうちに全てのマイソクを剥がすという強硬手段に出ました。そして、3カ月間の来店件数や成約件数などを検証した結果、マイソクのあった前年同月比より減少することもなく、むしろ成約率が平均2%アップしていました。

 もちろんそれは、以降の継続的な検証でも同様の結果だったのです。

業務のブラックボックスを取り除く

 マイソク管理のように、客観的な視点で社内の業務を見渡せば、改善できるポイントはたくさん見つかります。勤務年数が長い従業員は、その場に長くいて「当たり前」に感じているだけですから、日々の職場で起こる現象を疑ってみることが大切です。

 このように、日々の業務で起こっていることに注視し、「ツッコミどころ」を探していくのです。ただし、これはいわば「見えやすい問題」です。残念ながら、それらは氷山の一角であり、表面的に見えることだけ解決していても、部分的な業務効率化にしかなりません。

 当時のウチダレックは、各従業員がバラバラの業務プロセスで仕事をしており、進捗管理も見えず、統一されたマニュアルなどもありませんでした。個々の業務がブラックボックス化していたのです。

 よって、ブラックボックスの外側にいては、「残業が多い」「職場の雰囲気が悪い」「若手が育たない」といった現象が見えるばかり。非効率の原因は、各部署の業務に細かくちりばめられてしまっており、簡単に見いだすことはできない状態でした。

 各部署の細かな業務改善を行うには、それぞれの部署に入り込んで業務プロセスを洗い出す、いわば「ブラックボックスを地道に解体していく」アクションを起こさなくてはなりません。「これを直せば、パパッと解決!」とはいかないのです。

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