インドに自社工場を持ち、現地の女性たちの手でハンドメイドのエシカルアクセサリーを制作、販売し、やりたいことを積み重ねながら、いかに自分の人生をハンドリングしてきたのか。
ライブ配信で開催されているITmedia エグゼクティブ勉強会に、エシカルアクセサリーメーカー スプリング代表取締役の立花佳代氏が登場。インドの伝統工芸品の技術を生かしたブランド「MAYGLOBE by Tribaluxe(メイグローブ バイ トライバラクス)」を立ち上げ、インドの現地女性たちとともに製品を作ることで、自立支援を行っている立花氏が、「やりたいことを全部やりたい。いつまでも自分の人生を自分で決めるための方法」をテーマに講演した。
立花氏が手掛けるブランド「MAYGLOBE by Tribaluxe(メイグローブ バイ トライバラクス)」では、インドの伝統技術を生かした手刺しゅう、ビーズワークなどを特徴とするアクセサリーを販売している。存在感のあるデザインながらも、軽くつけ心地がよいということで、話題のエシカルブランドだ。
このブランドではインドに自社工場を持ち、現地の女性たちを雇用してハンドワークで製品を生産している。日本とは考え方も常識も違うインドという国で、日本人が求めるクオリティーのアクセサリーを作るには、並々ならぬ苦労があったという。
神戸三宮で小売店を営む両親の元に生まれた立花氏は、23歳で結婚、27歳で離婚し、シングルマザーとなった。コツコツとお金をためて、1999年にスプリングを設立し、当初は韓国や香港など、アジアで作った製品を日本で販売していた。やがて、インドの伝統技術に魅せられた彼女は、インドで製品を生産することを思い立つ。
「2005年頃、インドでものを作っているという会社はあまりありませんでした。遠い土地でハンドリングも難しいというネガティブな要素もあったのですが、逆にこのインドという国での生産をうまくハンドリングできれば、それは私にとって大きなチャンスなのではないかと思い、取りあえずやってみようと挑戦を決めました」(立花氏)
しかし、細かい手刺しゅうが必要になる製品を作るのは、簡単ではなかった。GDP6位、IT先進国といわれるインドだが、デリーから車で2時間かかる村では、インフラも整っておらず、電気はいつ通るか分からない状況で、牛の糞を燃料にして料理などを作っていた。作業場には屋根もなく、野ざらしの地面にゴザを敷いて、作業を行っていたという。
「最初の頃は、日本に届いて箱を開けてみると、ザラザラだったり、湿っていたりしました。製品もビーズが取れていたり、縫い目がガタガタだったりするので、1つ1つの製品をチェックし、フィードバックを行っていました。2012年の段階でも、まだミスが多かったですね」(立花氏)
やがて、現地で販売する製品と一緒に作っていてはクオリティーは向上しないと考えた立花氏は、日本専用の生産ラインを作る必要に気付き、現地に自社工場を建設。おそろいのピンクの制服を用意し、皆で着用することで、チームの士気を高めていった。そうやって現地の女性とコミュニケーションをとり、信頼関係を築いていくことで、パリで行われた展示会に出展するほどのクオリティーの高い製品を生み出すことができるようになった。
よいアクセサリーを作るために自社工場を作り、現地の女性たちを雇用してきた立花氏は、やがてあることに気付く。
「だんだんと村が発展しているんです。洗濯機が買えるようになっていたり、これまでは弱い立場だった女性たちが工場で働くことで現金収入を得て自立ができていたり。私はもちろんいい製品が作れてハッピーですが、私だけではなく、アクセサリーを作るインドの女性たちも幸せになっている。こんなすばらしいことはありません」(立花氏)
そこで、立花氏は現地の人々にさらに幸せになってもらおうと、2019年8月に、現地のお年寄りのための無料メディカルケアーを実施した。日本と衛生環境の違うインドでは、不潔な手で目を触り、雑菌が入って目の病気になる人が多いという。そのため、眼科医を呼んで目の検診を行うとともに、必要な人に眼鏡を配るなどの活動を行った。新型コロナウイルスの影響でここ数年は実施できていないが、継続的な取り組みとして今後も続ける予定だ。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授