インドという未知の国で自社工場を立ち上げて製品を作り、結果的に現地の女性やお年寄りを支援するなど、自身のやりたいことを軽やかに実現させているように思える立花氏。「やりたいことを全部やりたい」という彼女は、どのように人生の方向性を決めているのだろうか。「自分の人生を自分で決めるための7つのルール」を教えてくれた。
「自分の子供の頃の夢はなんだったか」と考えて、「そろそろ始めなければ」とあせって始めてしまうと、続かないでしょう。それが人のためになることであっても、自分が楽しくなかったら続けることは難しいはずです。大きいことだとハードルが高いので、小さなことから始めて、1つを達成するとまた次の目標を立てていく。そうやって自分の楽しめる小さなことを始めて、達成する楽しみを積み重ねていくことが大事だと思います」(立花氏)
「技術が発達し、人が物を作って売ることが簡単になった時代です。商品自体はコピーもできるのですが、ブランドが持つストーリーはまねすることができません。インドでいろいろな問題を乗り越えながら現地の女性たちと協力しあって製品を作っている、これは誰にもまねできない『MAYGLOBE』だけのストーリーです。そのストーリーを発信していくことで、ブランドのファンになってくれる人がいる。SNSのフォロワーの数ではなく、そのストーリーをどれだけ深く伝えられるかが重要だと考えています。1000人の知り合いよりも10人の強力なファンが大事です。そのために、オンライン販売だけでなく、百貨店のポップアップショップなどにも積極的に出店して、店頭でブランドのストーリーや思いを伝えることで、着実にファンを増やしています」(立花氏)
「私はこれまで韓国とインドを主軸にものづくりをしてきました。この両国に、素晴らしいパートナーがいます。彼らとの出会いは偶然でしたが、価値観が同じだったから必然的に引き寄せあったんだと思っています。何を大切にしているか、根底にある気持ちが同じであれば、問題があっても乗り越えていけます。この人なら信頼できる、価値観を共有できる人に、大切な仕事を託していく。そのために必要であれば現地で車を買い、事務所を用意するためのお金も渡す。本当に必要なことには惜しまずに、投資することが大切です。また、パートナーは“できない理由”ではなく“できる可能性”を話してくれる人であることが大切です」(立花氏)
「インドでものづくりをしていると『なぜできないの?』と言いたくなることがあります。でもうまくいかないときはお互いの価値観がずれている可能性があります。日本とインドでは衛生観念や基準が違うので、やっぱり百聞は一見にしかずで、現地を見に行って現地の環境を理解すれば、『靴は脱いで、手をきれいに洗って、作業台もきれいにして布を敷いて作業してください』と具体的に指示ができます。『なぜできない?』ではなく、できる方法を探っていくのが大事です。また、日本の環境が絶対だというのではなく、インドの環境も理解して、一方の価値観を押し付けるのではなく、理解しあうことが大切です」(立花氏)
「私は家で子どもの前でも、仕事の話をするようにしています。家族は貴重なマーケティング材料ですし、子どもに話すことで、考えをまとめることができます。娘は工業大学を卒業して、現場監督の仕事につきました。やはり男社会なのでいろいろ大変そうですが、『お母さんの苦労に比べたら、やめるわけにはいかない』と言うんです。子どもも一人の人間として、どんどん仕事の話をすることで、自分だけではなく、子どもの成長にもつながるのだと感じています」(立花氏)
「SDGsが叫ばれるなか、ちょうどコロナが発生しました。これはまさに警鐘のタイミングで、世界がつながっていることを多くの人が実感したはずです。エシカルブーム、SDGsの意識が高まっている今だからこそ、私がこれまでインドに行って見聞きした、インドが抱える問題や現地の状況などを伝えていければと考えています。昔と違って情報も入ってきやすいので、やりたいことを世界中から探せるようになっています。世界の問題と自分は無関係なのではなく、つながっているんだという意識を持って仕事をしていけばいいのではないでしょうか」(立花氏)
「挑戦したいけど何からやっていいか分からない、失敗したら不安だから挑戦できないという人がいますが、私は思いついたらやればいいと思っています。不安は行動しないからやってくるのです。挑戦して失敗しても、生きてはいけるはず。失敗したら、ちょっとお金が減るとか、それくらいです。回収を急がず、ダメなら再度挑戦すればいいのですから。小さな成功しそうなことから始めてみて、少しずつ大きなことに挑戦していくのが近道ではないかと思います。挑戦しても実はあまりなにも変わらないですから」(立花氏)
7つのルールに基づいて、自分が楽しめる小さな“やりたいこと”に挑戦し、少しずつ大きなチャレンジを重ねてきた立花氏。現在のミッションは、インドの女性が生きやすい環境を作っていくことだと言う。
立花氏は、「インドの女性は若い頃に子どもをたくさん産んで、子育てするだけという人生を送る人が多くいます。今やっと働きやすい環境づくりはできてきたので、次はインドの女性が人生の選択肢を持てるようにしていきたい」と講演を締めくくった。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授