経営戦略とIT戦略はビジネスをドライブする両輪であり車軸となるのがDX戦略――モリタ 取締役 岡本智浩氏「等身大のCIO」ガートナー 浅田徹の企業訪問記(2/2 ページ)

» 2023年06月20日 07時05分 公開
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 情報システム部門に求められるスキルとして、企画、設計からプログラミングまでの全てを内製化した方がいいのか、企画、設計だけで、プログラミングは外注した方がいいのかといったディスカッションをガートナーの担当者と繰り返しています。基本は内製化ですが、もし外注してもそれを評価できるだけの技術、スキルは持っておくべきというのがガートナーの回答でした。

統合された1つの情報の活用で、データ活用のレベルの格差をなくす

――今後のCIOやIT部門はどうあるべきと考えていますか。

 経営とITは両輪なので、経営戦略を実現するためのサポートと実行のための部隊であるべきだと思っています。今の時代、ITを避けて経営戦略は語れません。情報戦略は経営戦略なしに実行できません。会社の成長のためには、より密接な関係であった方が効果的な活用ができると思っています。

――ガートナーが提唱する戦略のフレームワークがあるのですが、3段階の成熟度があり、もっとも成熟度の高いのがIT戦略と経営戦略が1つであると定義されています。しかし現状、多くの企業は経営企画部が経営戦略を作り、それに基づいてIT部門がIT戦略を作るという主従関係になっています。

 2022年度より新たな中期経営計画がスタートしていますが、その前の中期経営計画から経営戦略を策定するときに、営業戦略、マーケティング戦略、人材戦略などと同列でIT戦略も1つの柱として組み込まれています。今回はIT戦略を推進するための横串となる取り組みの1つとしてDX推進室を立ち上げています。DXを車軸とすることで、経営戦略とIT戦略の両輪を回すことができます。

――ガートナーでいうイネーブラーとしてDXが組み込まれているということですね。具体的な取り組みについてお聞かせください。

 具体的な取り組みとしては、社内の情報インフラの統合があります。現在、国内外に分散しているさまざまな情報を活用するために整備し、より一層の情報活用を推進していきます。

 具体的には、SFA、CRMの得意先情報から統合を開始しています。これまでもデータ活用は行ってきましたが、得意先情報など一度整理しておきたいと考えました。クラウド化を実現すれば、国内外全てのグループ企業から統合された1つの情報を活用することが可能になり、データ活用のレベルの格差をなくすことができます。

 また既存製品においても、電子カルテ・レセプトコンピューターと連携することで診療チェアユニットの稼働時間などのログを集約できます。これによりいつごろメンテナンスが必要になるといった予防保守に利用することもでき、より充実した歯科医のサポートも可能になります。

――これからの人材に期待することを聞かせてください。

 まずは、「やってみる」「動かしてみる」「さわってみる」ことです。新しい技術だから、自社で使ったことがないからといった理由で立ち止まるのではなく、まずは行動して、次の一手を考えることが必要です。考えているうちにどんどん時代が進んでいくので、答えが出たときには次の段階に進んでいます。そこで、まずは行動して答えを出し、次の一手を考えてほしいです。

 入社したころの10年のスピード感は、現在の1年、2年の感覚です。これまで、さまざまな経営計画を考え、実行してきましたが、現在はさらにスピード感のある戦略が不可欠です。だからこそ、まずやってみる。一歩を踏み出してみてもし失敗しても、次はいかに成功させるかを考えればよいのです。

対談を終えて

以前より岡本さんと話をするたびに、テクノロジーを活用したビジネスへの貢献に関し、とても地に足がついていると感じていました。今日の対談で、新卒から一貫してモリタで勤務し、IT部門、ビジネス部門、そして経営企画と、幅広い分野の経験を積んだうえで、取締役に就任したことを聞き、なるほどと合点がいきました。加えて、明るい性格で、何事にも積極的に取り組んでいる岡本さんだからこそ、周囲からの信頼も厚く、それがまた推進力になっているように感じました。なにか温かい気持ちになった対談でした。

プロフィール

浅田徹(Toru Asada)

ガートナージャパン エグゼクティブ プログラムリージョナルバイスプレジデント

2016年7月ガートナージャパン入社。エグゼクティブ プログラム エグゼクティブパートナーに就任。ガートナージャパン入社以前は、1987年日本銀行に入行し、同行にて、システム情報局、信用機構室、人事局等で勤務。システム情報局では、のべ約23年間、業務アプリケーション、システムインフラ、情報セキュリティなど、日銀のIT全般にわたり、企画・構築・運用に従事。とくに、日本経済の基幹決済システムを刷新した新日銀ネット構築プロジェクト(2010年〜2015年)では、チーフアーキテクトおよび開発課長として実開発作業を統括。2013年、日銀初のシステム技術担当参事役(CTO:Chief Technology Officer)に就任。日銀ITの中長期計画の策定にあたる。

2018年8月、エグゼクティブ プログラムの日本統括責任者に就任。

京都大学大学院(情報工学修士)および、カーネギーメロン大学大学院(ソフトウェア工学修士)を修了。


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