神社参拝で幸福度向上 経営者やリーダー層が神社に参拝すべき理由とはITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(1/2 ページ)

初詣や厄除け、厄払いなど、何かと神社に参拝する機会は多いもの。実はその神社参拝が、幸福度の向上や仕事の成功に結びついているのかも……。社会心理学者の八木龍平氏が、神社参拝で得られる“ご利益”について話す。

» 2024年01月23日 07時00分 公開
[松弥々子ITmedia]
社会心理学者 八木龍平氏

 ライブ配信で開催されているITmedia エグゼクティブ勉強会に、社会心理学者の八木龍平氏が登場。『成功している経営者はなぜ神社好きが多いのか?』というテーマで講演を行った。

 北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科でeラーニング、知識経営を研究し、博士号を取得した八木氏は、「成功している人は、なぜ神社に行くのか?」、「しくじりをした人は、なぜ神社に行くと大成功するのか?」など、数々の著書を発表している。知識科学に基づき、スピリチュリティ、科学、経済、文化の4つの側面から、神社や神社参拝について分析し、発信している。

もっとも神社に参拝しているのは、「会社役員・経営者」だった

『成功している人は、なぜ神社に行くのか?』

 3792人に対して調査したあるアンケートによると、全体の66.4%の人が「お寺と神社、両方もしくはどちらかに行く」と答えている。この結果を職種別に見ると、もっともそのパーセンテージが高いのが「会社役員・経営者」で80%がとなっている。次に高いのが「定年退職」で75.5%、「会社員」が67.7%という結果になった。

 逆に、「お寺と神社、両方もしくはどちらかに行く」と答えた割合がもっとも低いのは「無職」で53.4%となっている。

「経営者は、株主総会の前や仕事始めなど、神社参拝が業務の中に入っていることが多いですよね。また会社員も、仕事始めなどに皆で参拝される場合も多いのではないでしょうか。では、神社の神様とは何なのでしょうか?」(八木氏)

 八木氏によると、日本の神様について考えた時、“自然神”と“ご先祖さま”の2パターンいるとのことだ。“自然神”とは、太陽、月、雲、海、風などの自然崇拝としての神社神道をさす。もう1つの“ご先祖さま”とは、亡くなった人をさしている。神道には亡くなった人が神様になるという考え方があり、これが日本人の宗教観や歴史を大切にする意識と結びついている。そして、日本の神様の名前や存在には、大きな特徴がある。

 それぞれの神社には、御祭神が祀られている。その御祭神の名前には、「建速須佐之男命(タケハヤスサノオノミコト)」のように、 “命(みこと)”という文字が使われていることが多い。この 命(みこと)を持つのが、日本の神様の特徴なのだ。

 命(みこと)とは、要するに“使命”を意味している。氷川神社などに祀られているスサノオは、神話の中で川の氾濫を沈めたという逸話がある。つまり、スサノオの使命は、治水などの「災害対策」だとも言える。神様とは命(みこと)を持っている存在なのだ。

 「ここで、先ほどのアンケートの結果を思い出してください。神社に参拝する行為は、神様の命をいただく、ご利益をいただくことを表します。会社経営者や役員がよく神社に参拝するのは命(みこと)=使命を授かるということで、つまり多くの仕事がくることです。仕事がない、つまり使命が回ってきていない無職の人は神社にあまり参拝していないことになります。このデータから、神社によく行く人にはよく仕事が来るということが推測できるのです」(八木氏)

神社参拝、それは神様からご利益として使命をいただくこと

 神社に参拝して「ご利益をいただく」という。ではこの「ご利益」とは何を意味するのだろうか。「利益」とは仏教用語で「神様の徳」、つまり「ご神徳」を意味する。「ご神徳」は命(みこと)でもあるため、「ご利益をもらう」というのは、「神様に、この世の中に貢献するための何らかの命(みこと)、使命をいただくこと」といえる。

 ただ、こういった見方は、多くの神社で広く共有されている意見ではない。神道は宗教ではあるが、教祖がいたり、経典や教義があったりするわけではない。「神道は言挙げせず」と言うように体系的な教えが明文化されていないため、自分で感じ取り、読み解くのが大切だ。

 「私のこの意見に違和感を覚える人もいるかもしれません。自分が文献を調べたり、人に教えを乞うたりするうちに自分なりにたどり着いた考えを伝えているので、もし“それは違う”と考えた場合は、それはそれで正しいと思います。自身にとっての神道や神様観を大事にしてください」(八木氏)

神社仏閣への参拝が地域への愛着を高め幸福度を向上させる

 次に八木氏が紹介したのは、2008年に東京工業大学の研究室から鈴木春菜氏・藤井聡氏によって発表された『「地域風土」への移動途上接触が「地域愛着」に及ぼす影響に関する研究』という論文だ。この論文を要約すると、「神社仏閣のある地域とない地域を比較すると、神社仏閣のある地域に住んでいる人の方が地域への愛着心が高い」ということになる。

 地域には神社仏閣以外にもさまざまな施設が存在している。この論文での調査によると、コンビニエンスストアやパチンコ屋、ボーリング場などさまざまな施設があっても、地域への愛着心に影響はない。しかし、神社仏閣がある場合は地域への愛着が高まるという。

 「何かに愛着があるとやる気が増す、やる気が増すとパフォーマンスが向上する、パフォーマンスが向上すると仕事などでも結果が出る、ということがありますよね。神社仏閣があると、仕事などでも成功しやすくなる、生きやすくなると納得しました。何かに愛着を持つのは、それを知ることから始まります。神社仏閣があることで、社会に対する愛着も増し、日本への愛着も高まっていきます」(八木氏)

 もともと、一人ひとりの人間の才能や努力には、それほど大きな差はない。しかし個人が持つ「意欲」には個人差がある。意欲の高い人がやる気を持って取り組んでいると、結果も出やすくなる。神社仏閣が近くにあれば、意欲を持ちやすくなり、やる気も出やすくなるということなのだ。

 さらに八木氏は、2017年に大阪大学社会経済研究所の伊藤高弘氏、窪田康平氏、大竹文雄氏らが発表した『寺院・地蔵・神社の社会・経済的帰結:ソーシャル・キャピタルを通じた所得・幸福度・健康への影響』という別の論文について触れた。この論文では、「寺院・地蔵・神社がある方が、社会の幸福度が高くなる」と結論付けられている。

 「この論文の中に、小学生の時に近所や通学路に寺院・地蔵・神社があると人への一般的信頼や互恵性(与え合う性質)・利他性が向上するという調査報告があります。先ほども話に出た『やる気』の原因には、周りの人が信用できるかどうか、という点が関わってきます。つまり、周りの人を信頼し、周りの人と与え合おう、役立とうと思っている人の方が仕事でも力を発揮できるはずです。間接的に、神社仏閣があることが仕事のパフォーマンスに大きく関係があることがこのレポートに示唆されているように思います」(八木氏)

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