第2回Z世代が幻滅する職場の共通項とはZ世代の早期離職は上司力で激減できる!(2/2 ページ)

» 2024年05月21日 07時04分 公開
[前川孝雄ITmedia]
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 「資金繰りに困っている企業に融資できず、金余りで困っていない企業に無理やり融資をお願い営業する毎日に、自分は何のために働いているのか分からなくなった」「融資できないと本部判断が出た思い入れのあるお客様に、自分の人脈でマスコミを紹介し、PRに協力したところ、支店長からコンプライアンス違反だと叱責された。会社は誰のためにあるのか空しくなった」

 「もっとお客様のために働きたいので、コンサルティング会社に転職を決めた。人事からの引き留めは『30代からでも支店長に昇進できる人事制度を検討中なので考え直せ』だった。お客様より行内出世しか眼中にない組織に、さらにがっかり……」

 いかがでしょうか。若手と組織側との意識の違いは歴然です。この若手側が感じた違和感やギャップを、本人たちのリアリティショックの問題だと一方的に決めつけてはなりません。組織側、上司側が、客観的に内省すべき点もはらんでいる可能性に留意しましょう。ことに、「人材育成」「社会貢献」の実践にしっかりと取り組めているか、不断の自己点検と改善への努力が不可欠です。

Z世代部下育て上手な上司の話し方

 新入社員のリアリティショックは、早ければ入社後すぐ、あるいは「5月病」などといわれる一息ついた時期に現れる場合もあるでしょう。また、仕事に慣れてくる2年目、3年目の節目の時期など、さまざまなケースが考えられます。

 上司はその兆候を察したら、傾聴の姿勢でショックの内容と本人の考えを丁寧に聴き取ることです。どのような点で違和感を持っているのか、相手が整理しきれていない気持ちまで、しっかり聴き取りましょう。

 ここで大切なことは、ギャップや違和感にフタをするのではなく、本人のショックの内容を共感的に受け止め、本人と同じ目線での理解に努めることです。

 上司にとって納得いかない内容であったり、本人から是非の回答を求められたりした場合には、「少し考えてみるので、一度預からせてほしい」と一呼吸置き、自分の宿題に残すことでもよいのです。性急に答えを出すことより、まず相互理解に努めてください。

 リアリティショックを一方的に「新入社員側の問題」「自分で乗り越えるべき課題」と決めつけないこと。組織と本人の双方にとっての課題である場合も視野に入れ、上司が橋渡し役として対話を続けていく姿勢を持つことです。

 新入社員から預かった疑問や質問への答えの宿題は、長らく放置してはいけません。上司自身の内省をもとにショックの内容を整理し、さらに対話を行い、新入社員が仕事の現実を捉えなおし、自分なりに幅広く考える力を付けられるようにサポートしていきます。

 その際、新入社員の感じ方に誤解があるのか、誤解ではないが捉え方が一面的なのか、むしろ組織としての課題なのかを客観的に判断し、対話の仕方を考慮することも必要です。以下に、判断と対応の例を挙げておきましょう。

【新入社員の側に誤解がある場合】

「指摘には〇〇の点で誤解があると思うので、まずその点を△△と捉え直してみてほしい。その上で、さらによい意見やアイデアがあれば、ぜひ聞かせてほしい」

【捉え方が一面的な場合】

「指摘の状況は〇〇の面では確かだが、もう一方で△△の側面もある。その両面を考慮すれば、もっと良い対応方法やアイデアがあるのでは……。どんな工夫ができるか一緒に考えよう」

【組織としての課題の場合】

「指摘は確かに一理ある。まだ組織が古い考え方から変わり切れていない部分だ。自分も〇〇に向けて少しずつ改善していきたいので、ぜひ一緒に力を貸してほしい。あなたの意見や提案も聞かせてほしい」

 新入社員の立場からは、自分に誤解や一面的な捉え方があっても、それを埋めるための対話や助言の機会を得られると感じられることが大切です。また、自分のショックが正しいと感じても組織がすぐに受け入れてくれない時に、上司が前向きに受け止め、共に改善策を考えてくれる...そうした安心感を得られることも大きいのです。それが、新入社員がリアリティショックを自分の学習材料として前向きに受け止め直すための力になるのです。

 次回の連載第3回(最終回)では、「若手が辞めにくい職場のつくり方」を取り上げます。


若手部下の早期離職を激減させ、成長と働きがいを育むマネジメントについてより詳しく知りたい方は、拙著『Z世代の早期離職は上司力で激減できる!「働きがい」と「成長実感」を高める3つのステップ』(FeelWorks、2024年4月1日発行)をぜひご参照ください。

著者プロフィール:前川孝雄(株式会社Feel Works代表取締役/青山学院大学兼任講師)

人を育て活かす「上司力(R)」提唱の第一人者。(株)リクルートで『リクナビ』『ケイコとマナブ』『就職ジャーナル』などの編集長を経て、2008年に (株)FeelWorks創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、研修事業と出版事業を営む。「上司力(R)研修」シリーズ、「ドラマで学ぶ『社会人のビジネスマインド』」、eラーニング「パワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」、「50代からの働き方研修」等で、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年(株)働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、(一社)企業研究会 研究協力委員サポーター、(一社)ウーマンエンパワー協会 理事等も兼職。30年以上、一貫して働く現場から求められる上司や経営のあり方を探求し続けており、人的資本経営、ダイバーシティマネジメント、リーダーシップ、キャリア支援に詳しい。連載や講演活動も多数。

著書は『部下全員が活躍する上司力 5つのステップ』(FeelWorks)、『部下を活かすマネジメント“新作法”』(労務行政)、『本物の「上司力」』(大和出版)、『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks)、『ダイバーシティの教科書』(総合法令出版)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『一生働きたい職場のつくり方』(実業之日本社)、『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)、『50歳からの人生が変わる痛快! 「学び」戦略』(PHP研究所)等約40冊。最新刊は『Z世代の早期離職は上司力で激減できる!「働きがい」と「成長実感」を高める3つのステップ”』(FeelWorks、2024年4月1日)

※「上司力」は株式会社FeelWorksの登録商標です。


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