トップがIT投資を迷う理由の1つに、人材の不足がある。
確かに、人材不足は企業規模が小さくなるほどよく耳にする話である。大企業でも、事業部・事業所・部・課と事業単位が小さくなるに従って、人材に悩むケースが少なくない。例えば、プロジェクトチームに供出する人材がいなくて悩む部署をいくつも見てきた。
しかし、先入観に捉われてはいないか。ITやプロジェクトチームは難しいもの、よほど気の効いた人材をあてがわないと勤まらないだろうと考えてしまい、目の前の人材を見て「こいつじゃ無理だ」と決め込んではいないか。そもそも人数が足りなくてラインから引き抜くことは全く不可能だ、と決め込んではいないか。
しかし、筆者の経験から「その気にさえなれば、人材はどうにかなる」、「こいつじゃ無理だと思った人間でも、期待すると意外と光る」、「人数が足りないなら足りないなりにやり方がある」と断言できる。理屈を語るよりも、筆者の経験した実例を示す方が納得してもらえそうだ。
昔の話で恐縮だが、筆者自身の経験である。
筆者は、いわゆる「量産」を主流とした工場で非量産部門に勤務していたことがある。コンピュータシステムは、当然ながら量産管理指向であった。少数派の非量産管理は長年にわたって情報システム部門から見向きもされなかったし、幹部も非量産管理のコンピュータ化に無関心だった。ある時筆者は,非量産製造部独自でコンピュータシステムを構築することを思い立った。幸いにして関係者の努力のかいがあって設備投資の伺いは認可されたが、そこからが問題だった。自分たちの手でシステムを構築しなければならなかった。
昨日まで製造現場の部品倉庫で部品の出し入れを黙々と担当していた、工程管理で現場を駆け回り怒鳴り合っていた、あるいはさっきまで頭巾を被って現場の事務処理や連絡に駆け回っていた、男女数名の社員たちを、情報システム部門にお願いしたり、社外の研修会に派遣したりして、即製のシステムエンジニアやプログラマー、オペレーターとして育てようとした。無謀だという周囲の批判もあったが、筆者は必死だった。
彼らは、決して優秀とは見なされていなかった。しかし、見事に期待に応えてくれた。「自分たちの手でシステムを構築するのだ」というモチベーションの高さもあったろう。量産大工場の中に、初めて非量産管理システムが構築され、稼働させることができたのだ。
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