業界の常識を疑うことが変革の出発点――ソニー生命の橋本常務ビジネスイノベーターの群像(2/2 ページ)

» 2011年11月25日 08時00分 公開
[聞き手:浅井英二、文:蒲池明弘,ITmedia]
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危機感からさらなるイノベーションを模索

 生命保険業界を取り巻く経営環境は日増しに厳しくなっているが、ソニー生命は堅調に業績を伸ばし、成長を続けていることが伝えられている。次のステージへの展望を聞いた。

 「これからのライフプランナーに求められるのは、人生の節目ごとにお客様からの相談に応じ、保険だけではなく、家や車の購入、子供の教育、老後の暮らしなどについて最適の回答を導き出すためにお客さまをサポートし続けること。保険会社としての役割だけではなく、法律、税務、福祉、不動産など様々な方面の知識を今まで以上に備え、幅広くコンサルティングしていくこと。それがこれからのチャレンジだといえるだろう」(橋本氏)

 さらなる変革を志向する背景には、強い危機感がある。

 「今やネットでも通販でも保険商品は買える。さらにコミッションの可視化が進むと、お客様の目も一段と厳しくなるだろう。生命保険以外の価値をいかに提供できるかどうかが、重要になってくるはずだ」(橋本氏)

社会構造の変化こそ、変革のターゲット

 ひと昔前の日本は、人口の増加に支えられた国による社会保障がしっかりと構築され、企業の諸制度がそれを補完していた。国の制度が1階部分、企業の制度が2階部分だとすると、生命保険など自己責任による将来保障は3階部分に相当する。

 「1階、2階が強固だったので3階のことはほとんどの人が深く考えていなく、またそれほど考える必要もなかった。しかし今は、社会環境の変化によって、自助努力による将来保障の重要性がかつてないほど高くなっているのに、多くの人は誰に相談すればいいのかさえ分からない」(橋本氏)

 このような時こそ、ライフプランナーが貢献できる環境になってきているが、お客さまからのニーズに適切に応えられるよう、ライフプランナーのさらなる質の向上を目指していく必要があると橋本氏は考えている。

 一人ひとり、あるいはひとつの家族が抱えるリスクも当然ながら、様変わりしている。ひところならば、一家の大黒柱が突然亡くなることが家族にとって最大の危機だったが、現代の日本では、思いもかけない長寿が本人や家族に悲劇的な状況をもたらすことも珍しくはない。

 「どれだけ長生きしてもいいのですよ、頑張って長生きしましょうよと励ますことができるような仕事をしたい。長い老後の日々を夢のある生活にできるかどうかが、ライフプランナーの腕の見せ所になる」(橋本氏)

 今後、共働き家庭が増えていくとともに、従来のように一家の大黒柱の死亡時の保障のみを重視した生命保険のあり方も変化していくだろう、と橋本氏は語る。米国ではこの20年ほど、専業主婦の比率が低下するにつれて、死亡保障型保険の件数が低下している。日本の生保業界にとって、聞き流せる話ではない。

 ソニー生命は設立母体がソニーというグローバルなメーカーであるため、独特の視野の広さがある。それは創業時にまかれた「種」なのかもしれない。

 「戦後間もなくソニーは世界各国で営業する中で、成熟段階の異なるさまざまな国と接した。ソニー生命の創業者たちはこう考えたようだ。日本の高度成長もいつかは終わる時が来る。社会は高齢化し、隠れていたリスクが顕在化する。日本が成熟した社会を迎えたとき、自助努力による保障が求められるはずだ」(橋本氏)

 そこに賭けたのが、ライフプランナーという新機軸だった。変化の芽を注意深く探るまなざしの中から、イノベーションは生まれ、継承されていくのだろう。

プロフィール:ソニー生命保険株式会社 執行役員 常務 橋本 眞史(はしもと まふみ)氏

1950年、東京都生まれ。1981年にソニー・プルデンシャル生命保険(現ソニー生命保険)に入社。銀座支社長などを経て、2004年執行役員 ライフプランナー第2営業本部長に就任。現在は執行役員常務。


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