企業の相次ぐM&Aや新規参入で活性化するBPM市場。一方で、ユーザー側ではBPMソフトを過信して失敗するケースも少なくない。そこで、CIOには正しい指標を見極めて導入をコントロールする力が求められる。
前回の記事「脱Excelで業績管理のスピードが向上」はこちら |
---|
BPMプロバイダーも、こうした変化を見逃していない。BPM製品を提供するベンダーはすでに100社を超え、その数は年々増えている。ただし業界ウォッチャーたちは、近い将来、市場の整理、統合が行われるだろうと見ている。主なBPMベンダーには、エンタープライズソフト大手のSAPやオラクルから、BIパイオニアのハイペリオン・ソリューションズ(カリフォルニア州サンタクララ:07年4月にオラクルが買収)やコグノス(カナダ・オタワ:07年11月にIBMが買収)、あるいはミッドマーケットに特化したサトリ・グループ(フィラデルフィア)、アウトルックソフト(コネチカット州スタンフォード)、アプリックス(マサチューセッツ州ウエストボロ)、クラリティシステムズ、ロングビュー・ソリューションズ、プロフィックス・ソフトウェア(いずれもカナダ・トロント)などがある。
SAPとオラクルは当然、自社のERP顧客にBPM製品を販売しようともくろんでいる。ハイぺリオン、コグノス、ビジネス・オブジェクツ(カリフォルニア州サンノゼ)などは、それぞれのBI製品ラインにBPMを追加した。ビジネス・オブジェクツは2005年、SRCソフトウェアを買収したときにBPM製品を入手している。一方、サトリは特定業種の垂直市場にアプローチしており、アウトルックソフトとプロフィックス・ソフトウェアはマイクロソフト指向のソリューションに磨きをかけて、中堅企業向けに使い勝手の良いテンプレートとExcel風のルックアンドフィールを提供している。
実際、ほとんどすべてのBPMベンダーがミッドマーケットを正面から見据えつつある。アウトルックソフトでは、自社のBMP顧客の60%が収益20億ドル未満の企業だとしている。
ガートナーのアナリストで「Magic Quadrant for CPM Suites 2006」の著者でもあるナイゲル・レイナー氏は、ハイペリオンの価格体系について、ミッドマーケット向きではないとするが、ハイペリオンの製品マーケティング担当上級ディレクタのジョン・オローク氏は異なる見解を示す。
「市場の一般的な印象として、われわれは大企業にフォーカスしているように見られているが、実際はわれわれの顧客の3分の1は収益10億ドル未満の企業であり、4分の1は収益5億ドル未満の企業だ」
では、中堅企業に最適なBPM製品の条件とはなにか? 当然、大企業向けの製品と必ずしも同じではない。例えば、大企業は強力な財務連結モジュールを必要とするが、中堅企業にとってそうしたモジュールはあまり重要ではない。
「サトリは財務連結機能を搭載しているが、ヘビーデューティな本格的なものではない」とレイナー氏。「ターゲットとする市場では、必ずしも必要とされないからだ。中堅企業の連結に関する要求はシンプルだ。複雑かつ本格的な財務連結よりも、むしろ集約化が主な作業になる」
垂直市場に特化するサトリは、ミッドマーケットを目指す他の有力BPMベンダーと一線を画している。現時点で、同社は全世界に80社の顧客を抱えるが、そのほとんどは法曹関係だ。もっともサトリは今年、ITコンサルティングやアーキテクチャルエンジニアリングなど、他の市場へも手を広げようとしている。
垂直市場に特化した製品は、ほとんどカスタマイズする必要がない。サトリでは、そうしたメリットに注目する中堅企業は多いと期待する。カスタマイズの必要性が低いということは、コンサルタント料金をセーブでき、投資回収を迅速化できることを意味する。ニューヨーク州バッファローの法律事務所、フィリップス・リトルは、サトリの早期導入顧客だ。同法律事務所は毎年、業績をベースにパートナーの報酬を決定する複雑なタスクを行っている。以前、このミスの多い労働集約型のプロセスは、忙しい予算サイクルの中で、1つのチームが昼夜ぶっ通しで100時間も費やして処理していた。
フィリップス・リトルでは、このタスクをサトリの「proCube」で自動化した。このソフトを選択した理由の1つは、法曹関係の特殊なニュアンスがあらかじめ製品に反映されていたからだ。この製品は単一のアプリケーションフレームワークとインタフェースを介してデータソースにアクセスでき、報酬の計算、レポート作成、分析を流れるように自動化することができる。
フィリップス・リトルの財務管理ディレクター、ブライアン・エッカート氏によると、「自動化により、会計および予算サイクルのきわめて多忙な時期に92人/時間を削減することが可能になった」という。
BPMソフトを導入したことで、同法律事務所の管理チームは、各パートナーの実際の収益性を把握できるようになり、それぞれのパートナーがどのように仕事をすれば効率性を高められるか確認できるようになった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授