社内の“金食い虫”とも言われるIT。そのITが会社の成長に積極的な役割を果たしているかどうか、ITエグゼクティブの考えを探った。そこから、彼らの戦略と戦術のバランス感覚を読み取ることができた。
最近、CIOの集まりに参加したシェル石油社長、ジョン・ホフマイスター氏は、10年前まで同社にエンタープライズレベルのCIOがいなかったと述べ、参加者を驚かせた。一部の事業部門にはCIOがいたものの、会社全体に責任を持つCIOはいなかったのだ。
しかし、シェルは2001年、もはやエンタープライズワイドのCIOのリーダーシップがなければ、これ以上先に進めないと判断した。シェルにとって、持続的な成長には会社全体のITをリードするITエグゼクティブが不可欠だったのだ。
このたび、レーダーには映らない会社の成長とCIOのリーダーシップの密接不可分な関係について検証した。17の垂直市場から200社(大企業100社、中堅企業100社)を対象に調査を行った。われわれは、会社の成長にITが果たす積極的な役割について、ITエグゼクティブがどう考えているかを探った。調査結果からは、会社の成長に合わせた彼らの戦略と戦術の慎重なバランス感覚が読み取れた。
明るい材料としては、調査対象となった企業の大多数が、現在も成長を維持していることだ。表面上、各社の成長シナリオは、企業規模によって異なる。調査した大企業の91%が「大きく成長している」および「成長している」と回答したが、中堅企業では「大きく成長している」と「成長している」の合計が55%だった(図1参照)。
成長していない大企業は、そうした閉塞(へいそく)状況に長く耐えることができない。経営陣の交代で事態の打開を図るか、低迷する株価に目をつけた別の大企業に身売りすることになる(図2、3参照)。
まれなケースだが、ITが業績不振に歯止めをかけることもある。国際的な金融機関のCIOは、競合他社の研究や顧客からのフィードバックをベースにシステムを一新、業績低迷から会社を救ったという。「最新システムの構築により、業績が向上しただけでなく、業界内での名声も高まった」と同CIOは振り返る。
CIOの多くは、会社が経営的に成熟し、低成長あるいはゼロ成長の環境下で、コストカットなどが最優先課題になったとき、どう対処すればいいか分からなくなる。その結果、彼らはしばしば成長に向けたコンセプト・フレームワークを見失う。
企業の成長には、さまざまな様態がある。最も基本的なものは、事業の地理的な拡大や製品の販売増に起因する組織的成長だ。国際的な技術系企業のCIOは、「設備計画チームと連携して、現行ロケーションや新規サイトの増改築を含む長期計画を策定している」と話す。
同社は最近、中国に新規拠点の開設を発表したが、IT部門もその計画に関与した。「われわれは長期計画に基づき、WANアーキテクチャを設計した。ハブはどこに置くか、データセンターはどこに置くかなどだ」と同CIO。
成長の様態には、その他にも、現行製品、サービスの販売増を目指す企業買収、あるいは特定の市場への新規参入を目指す企業買収、さらにはまったく新しい製品の開発などがある。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授