新卒の売り手市場といわれる採用環境の中、苦労して優秀な人材を採ったのにすぐに辞められてしまった、と嘆く企業も多いだろう。辞めない社員をつくるにはどうすればいいのだろうか。
3年で会社を辞める若者の存在がクローズアップされて久しいが、2010年からは、2002年度以降実施されたいわゆる“ゆとり教育”を受けた世代が社会人となって会社の門をくぐる。新卒採用をめぐる企業の状況は、今後ますます厳しいものになると言っていいだろう。
この傾向が顕著なのが、中小企業。景気の先行きが見えない状況の下、安定志向に走る学生や親の影響で、従来にも増して、いい人材を確保するのが難しくなっているからだ。
本書『辞めない採用、即戦力の育成で儲かる会社になる!』は、この中小企業の人材難というテーマについて、具体的なアドバイスを与えてくれる。
著者は、幹部社員の3分の1が元暴走族で、赤字続きだった“落ちこぼれ集団”株式会社武蔵野を、2000年度に日本経営品質賞を受賞するなど、年商35億の黒字企業に変えた辣腕経営者。自身の体験を基に、人材に困らない会社を作るためには、経営者が次の2点に取り組まなければならないと説く。
ひとつは、「優秀でなくても、自社に合って、なおかつ簡単に辞めない人材を採用すること」、そしてもうひとつは、「社員教育を徹底して、既存社員も含め、それなりの社員を仕事ができる人材へと成長させること」。本書では、これらのことを実現するための、さまざまなノウハウが24社の事例とともに述べられている。
応募が集まる求人広告の出し方や、自社をさりげなくアピールする方法、面接で相手を見極める質問、戦力化するための仕組みづくりなど、常日頃、人の問題で頭を痛めている経営者が読めば、参考になる箇所は少なくない。
さらに興味深いのは、著者が採用に当たって何よりも重視しているのが、能力や学歴などではなく、その人の価値観であるという点。経営者と価値観が合ってさえいれば、経営者に共感でき、辞める確率は下がり、経営方針にも素直に従い、その結果、仕事もできるようになるという。
確かに、経営者と社員の価値観が一致していれば、社員がそう簡単に辞めることはないし、辞めなければ、長い期間、教育を受けることができて能力も向上する。学生や転職活動者にとっても、会社を選ぶ際の有効な指針になるはずだ。
経営者、社員双方にとって、幸福な採用活動、就職活動とは何かということを考えさせてくれる1冊と言えるだろう。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授