第1回目のセッションから3週間後、チーム“笑う正直者”は、2回目のコーチングを迎えた。前回から比べると格段にリラックスした様子だ。コーチは前回から今日までの間に、チームにどんな変化があったのかを尋ねた。
第1回目のセッションから3週間後、チーム“笑う正直者”は、2回目のコーチングを迎えた。前回のセッションから今日までの間にチームとコーチとの間でEメールでのやりとりが行われ、宿題となっていた「笑顔であいさつ運動」は順調に進んでいる、との報告だった。3週間ぶりに会うチームメンバーは、前回から比べると格段にリラックスした様子だ。チームとコーチとの関係性も徐々に築かれているのが分かる。コーチは前回から今日までの間に、チームにどんな変化があったのかを尋ねた。
チームリーダーDさん
「いい感じですよ。笑顔であいさつ運動も進んでいるし、このメンバーで声をかけあう回数は増えてきていると思います」
メンバーEさん
「そうですね、以前よりもお互いのことを気にしたり、顔を見ると声をかけあい、時々チームの名前を思い出したりしていました」
メンバーFさん
「正直な話、日々の仕事で手一杯で、ほとんどコーチングのことは忘れていました。それに「挨拶ができるようになった」なんて小学生レベルの話で、一体こんなに時間と労力をかける意味があるんですかね?正直今この瞬間も、できることなら仕事に戻りたいですよ」
メンバーGさん
「えっと、自分もそう思います……」
出だしから雲行きはかなり怪しい。表面的には穏やかではあるが、実際の雰囲気は停滞しており、疲れ、あきらめ感、虚無感といった重い空気が流れている。こんな時、コーチは今この場に起きている雰囲気をシンプルに反映する。チームの今の状態を映す、鏡の役割を果たすためだ。続いて、前回のセッションからのチームの合意についてあらためて確認した。
チームの合意
「何でも感じていることを正直に話す」「ネガティブなことも笑って言い合えるムードにしていこう」
コーチは、先ほどのメンバーの発言はこの合意を体現したものであるとチームを認知し、今日のセッションでは、さらに本音を言葉にしていくようチームを励ましていく。さらに、このセッションで何について話したいのか、現場に沿った主題を明らかにする。あらためて「経営計画をチームでどう現実化するか」について深めることが合意された。
ここで「ディープデモクラシー(深層民主主義)」という考え方が紹介された。
ディープデモクラシー(深層民主主義)――。チームの本来の姿が正確に表現されるためには、チームにあるあらゆる声が聞き届けられる必要がある、という姿勢。通常、組織では、職位の高い人、経験のある人、外交的で口が立つ人などの意見が優先されがちだが、あえて不人気な声、タブー、沈黙などにも耳を澄ませる。そうした声にこそ、チームにとっての新しい情報があるからだ。また、互いに空気を読み合って対立を避けるのではなく、対立は組織の多様性の現れとしてむしろ歓迎する。多様性こそがコミュニティを創りだし、変化やイノベーションには不可欠だとするあり方。
ディープデモクラシーの姿勢を尊重しながら、今日の本題である「経営計画の現実化」に入っていく。部屋の中心に今日のテーマである「経営計画の現実化」と書いた紙を置き、このテーマへの本気度を立ち位置で示してもらう。立つ位置が中心に近いほど「経営計画の現実化」に本気であり、中心から離れるほどコミットしていないことを示す。メンバーがどの場所に立ったとしてもそこには重要な情報があるため、お互いの評価判断はしないことを事前に合意しておく。
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明治学院大学 経済学部准教授