世界4000人のCIO顧問として――ガートナージャパン 日高社長石黒不二代の「ビジネス革新のヒントをつかめ」(2/2 ページ)

» 2011年04月21日 07時00分 公開
[石黒不二代(ネットイヤーグループ),ITmedia]
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日本における真のグローバル化とは?

 こうしてみると、日本企業の仕事の進め方や文化は、かなり海外企業と違うことが分かります。日本が低迷して久しい今、日本企業のやり方は間違っていたと結論すべきなのでしょうか? だとすれば、私たちは何を直していけばいいのでしょうか? グローバル化がその答えでしょうか? だとすれば、私たちにとって真のグローバル化とは何でしょうか?

 企業にとっては、グローバル化した瞬間に、ITやプロセスの標準化が始まります。その国ごとに違う文化や考え方を知らずして標準化はできないうえ、結果として構築された組織やプロセスのガバナンスが必要となります。

 日本のメーカーや商社には、世界中に支店や生産拠点や連結子会社を数百持っている企業が多くあります。これらの企業は、グローバルなオペレーションをしているのですが、本当の意味でのグローバル化ができているかといえば、そうではありません。本社を含め、これら世界中の拠点で英語のコミュニケーションが行われているのか? ITを使って世界中の在庫がすべて見える化されているのか? IFASのコンプライアンスに準拠しているのか? できていないと答える会社がほとんどでしょう。

 しかし、グローバル化ができていないのは、能力の問題ではなく、日本人が単なる自己規制しているだけだと日高さんはいいます。拠点が世界中に散らばっているのに、相変わらず本社に留まっている人が多くてはグローバル化されているとはいえません。自分の意見を明確に表現する人が尊敬される文化では、各拠点でしっかり発言し、主張することができる人材を送り込むことが重要です。

 今まで、日本企業が海外で成功しているのはローカルに権限を委譲しているからという話が多すぎます。その呪縛から離れ、日本で本社採用した人を本社に留めるのではなく、ローカルに派遣して、そこでリーダーシップを発揮すべきなのです。また、ローカルで採用した人を本社に派遣して成功する例をつくるべきです。世界中にまたがる拠点を通じて、どこで何を生産してどこで何を売れば全体が最も効率よく動くかを、議論すべきなのです。

日本はどうすべきか?

 一方で、日本の強いところがあまりに見落とされていると日高さんは指摘します。日本人は真剣に仕事をします。仕事がお金を稼ぐ手段ではなく、生きがいである人が日本という国を構成しています。この強さを暗黙知や俗人化でなく、標準化できれば本当の意味で強い国になるはずです。

 新幹線が5分おきに時間通りに出発することも、いろいろなサービスの品質が高いことも日本の強みです。にもかかわらず、なかなかその強みを売り込んでいませんでした。今までのように、依頼されて作りましたというのではなく、日本の良さを、強みを積極的に売り込めるかに、今後挑戦していく必要があります。

友人こそ真のグローバリゼーション

 日高さんの一番の趣味は旅行です。北極海に行ったり、フェゴ島に行ったり、お話をうかがっていると、普通の日本人旅行客がまったく足を踏み入れない地名ばかりが出てきます。日高さんにすれば、日本人の祖先に会いに行くルーツ探しで、東南アジアの山岳地帯で日本人の祖先に会うことができます。

 今まで訪れた国の数は65カ国。ブータン、ラオス、ミャンマー、バンコクの誰も足を踏み入れない庶民の村にローカルなバスで乗り入れたこともあります。これらの経験は世界中の人と仕事をするうえで役立ちます。旅の話をきっかけに親しみを持ってもらい、友人になります。友人になれば信頼関係が生まれ、さまざまな情報を交換するようになります。食事をしたり、酒を酌み交わしたり、海外出張や駐在のときには、仕事だけではなくちょっと足を延ばして、町を見て、友人をつくる。真のグローバリゼーションのヒントは意外とそのあたりにあるのではと感じました。


【ガートナージャパン 日高社長からのメッセージ】

 このたびの東日本大震災の被災者とそのご家族の皆様へ、心からお見舞いを申し上げます。1日も早い復旧・復興をお祈り申し上げます。ガートナーは、グローバル規模で、客観的かつ豊富なBCP/DRに関する事例や提言を所持していますので、このようなときにこそ、いろんな観点で、日本企業の皆様のお役に立ちたいと感じています。震災の5日後より「事業継続管理に関する特別レポート一覧」をご提供し、また4月に開催するイベントでは、プログラムを一部見直し、直接本震災を鑑みた提言を盛り込みます。

著者プロフィール

石黒不二代(いしぐろ ふじよ)

ネットイヤーグループ株式会社代表取締役社長 兼 CEO

ブラザー工業、外資系企業を経て、スタンフォード大学にてMBA取得。シリコンバレーにてハイテク系コンサルティング会社を設立、日米間の技術移転などに従事。2000年よりネットイヤーグループ代表取締役として、大企業を中心に、事業の本質的な課題を解決するためWebを中核に据えたマーケティングを支援し独自のブランドを確立。日経情報ストラテジー連載コラム「石黒不二代のCIOは眠れない」など著書や寄稿多数。経済産業省 IT経営戦略会議委員に就任。


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