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» 2011年06月22日 07時00分 公開

海外ベストセラーに学ぶ、もう1つのビジネス視点:中国が世界を支配する時 (2/2)

[エグゼクティブブックサマリー,ITmedia]
エグゼクティブブックサマリー
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中国とお金

 中国国内では「ユアン(元)」と呼ばれている人民元は、ドルや円、ユーロとは異なり、トレードされない通貨です。よって、変動相場制にありません。その為、中国が貿易関税を引き下げたことによって、対外貿易が爆発的に増加しました。中国は低賃金の労働力を大量に供給するため、仮に経済成長が先細りになったとしても、製造業の基本賃金は常に競争力を保つことになります。 メキシコの製造業の経済が崩壊し、麻薬が主な輸出品となってしまった理由の1つに、メキシコは東アジアと同じ低賃金で労働力を提供することができなかったことが挙げられます。中国の低賃金労働力によって、引き続き輸出は増加し、商取引パートナーに対する巨大な貿易黒字は維持されていくでしょう。

 中国は一度も資本逃避に見舞われたことはなく、人民元は常に安定しています。しかし、2006年、著名な中国の経済学者である余永定は、「中国が極めて悪い方向に進んでいく可能性は30%ある」と述べました。

 最近出現している裕福なエリートの存在とは裏腹に、何億もの中国国民が深刻な貧困にあえいでいます。また、裕福な人々は都会、特に海岸沿いの大都市に住んでいますが、それが徐々に内陸へ広がって行くと言われています。さらに、専門家は、2015年までに中国は西欧諸国のほとんどが1960年代に到達した生活水準に達すると予測しています。

 中国の製造業のほとんどは西欧諸国や日本との契約のもと成り立っています。中国企業は新しい製品を生み出すのではなく、主に下請け契約を結びます。これは徐々に変わりつつありますが、いまだに基本的な形となっています。海外で競争している中国企業のほとんどは国有であり、また、特に鉄鋼やアルミニウムなどの産業全体も国が保有しています。

 また、1999年以降、中国人は米国の様々な金融商品、例えば米長期国債、政府系機関債券、社債などに重点的に投資を行っています。実質的に中国は米国にお金を貸し、消費と住宅ローン騒ぎをたきつけたことになります。米国経済がほとんど崩壊しかけても、中国は米ドルを買い続けました――その余裕があったからです。

 2008年9月、中国の外貨準備高は1.81兆ドルに上りました。西欧企業や諸国が正常に流動しない資産のせいで苦しんでいても、中国は信じられない程の額の現金を確保していたのです。中国以外の国には正確な額は分かりませんが、最も正しいと言われる見積もりでは、中国の総準備金額の60%は米国ドルが占めていると言われています。もし中国がその内の大部分を他の通貨に換金すれば、米国経済に深刻な影響を与えるでしょう。

 2008年、米国政府はファニー・メイとフレディ・マックおよびAIGを、この3社の主要投資をおさえていた中国からの圧力の元、救済しました。米国が中国からの圧力に屈した理由は、もし中国が米ドルを売り始めたら、米国経済の機能は停止してしまうからです。

 またこの時、中国は自国の準備金の大部分を占める米ドルに損害を与えたくないと思っていました。よって、ここで、中国と米国は相互財政依存をする唯一で前例のない共生関係を築きました。このようにして、現在、中国は強い相手と手を握り合っており、これは将来も続いて行くでしょう。

 中国の目覚ましい経済発展には様々な問題があります。まずはいかに急成長をしているとしても、それは一部の人間たちだけによってもたらされていることで、国内の所得格差は想像を絶するほどに開きがあります。また、産業においても基本は下請けとしての機能です。とは言え、膨大な資源を持ち、西側の大国に投資をしている現状、中国がもはや最強の国となったと言っても過言ではありません。

著者紹介

マーティン・ジェイクスは、「The Forward March of Labor Halted?」「The Politics of Thatcherism」の共著者です。また、UK think tank Demosの共同創設者です。


プロフィール:鬼塚俊宏ストラテジィエレメント社長

鬼塚俊宏氏

経営コンサルタント(ビジネスモデルコンサルタント・セールスコピーライター)。経営コンサルタントとして、上場企業から個人プロフェッショナルまで、420社以上(1400案件以上)の企業経営を支援。特に集客モデルの構築とビジネスモデルプロデュースを得意とする。またセールスコピーライターという肩書も持ち、そのライティングスキルを生かしたマーケティング施策は、多くの企業を「高収益企業」へと変貌させてきた。


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