データは分析してこそ価値――日本企業の苦手、情報活用に目を付けたブレインパッドの草野社長ビジネスイノベーターの群像(2/2 ページ)

» 2012年01月12日 08時02分 公開
[聞き手:浅井英二、文:大井明子,ITmedia]
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日本は分析官が専門職という認識が低い

 多くの日本企業が、データ分析の重要性に気付き始めてはいるものの、自社で行うには人やノウハウがない。だからこそ、ブレインパッドの出番が多いわけでもあるが、こういった状況について草野氏は、「日本ではまだ、分析官が専門職であるという認識がない。このため、企業の中で、分析担当者を育てるためのキャリアプランがないことが一因」と指摘する。

 データ分析には、日本企業の組織で言うと、データを取得し蓄積・管理する情報システム部門と、データをビジネスに生かすマーケティング部門が関連する。情報システム部門では、日々のシステムの安定運用を目的としているので、生成・取得されるデータをマーケティングのためにこまめに加工し利用する発想や動機はない。

 一方、マーケティング部門では、欲しい情報はイメージできても、それをシステムから取得するための権限とリテラシーがない。データを収集して解析し、ビジネスに生かすという一連の流れを理解できる専門性の高い人材が必要なのに、この流れが情報システムとマーケティングで分断されているというのだ。「本来はトップが、経営戦略レベルで、情報をどう活用するかどいう戦略を持つべきだ」と草野氏は言い切る。

 多くの企業が自社でデータ分析の人材やノウハウを持つようになれば、ブレインパッドのビジネスには打撃になるが、それでもいいのだと草野氏は言う。

 「一般の企業でも、ある程度の覚悟とコストがあれば、分析部門を立ち上げることは可能。それで日本が少しでも意思決定の質を上げ、社会全体が良くなっていけばいいと思う。それでわたしの起業家としての志は果たされる」(草野氏)

多様化進むほど、分析の重要性は上がる

 日本の消費者の嗜好はますます多様化し、また経済的格差も広がりを見せている。「均一であれば分析は必要ない。多様化すればするほど、分析による施策の効率向上が重要になる」と草野氏はみている。「しばらくはおもしろいビジネス」とは言うが、本人はそれほど社長業に固執していないようだ。

 「本当は社長タイプではなく、どちらかというと参謀タイプだと思う」という草野氏。将来の会社のあり方については、「わたしがいなくても会社として成長できる体制になるのが理想。自分自身は文系の出身で、理系の勉強もしてみたいので大学に行き直してみたい。ひとりの社員として分析を担当するのもいいな」とひょうひょうと語る。

プロフィール:ブレインパッド 代表取締役 草野 隆史(くさのたかふみ)氏

1972年、東京都生まれ。1997年慶應義塾大学大学院を卒業後、サン・マイクロシステムズ(現・日本オラクル)入社。1999年に同社を退社し、翌2000年にフリービットの立ち上げに参加。2004年にブレインパッドを設立。


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