国ごとに違う対応をせよグローバルへの道 SONY成長の軌跡(2/2 ページ)

» 2012年02月27日 08時00分 公開
[郡山史郎(CEAFOM),ITmedia]
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グローバリゼーションで大切なこと

 グローバリゼーションで一番大切なことは、このような、本社中枢における確たる戦略思想です。海外に進出して失敗するのは、決して現地のスタッフの努力や能力が不足しているからでは、ありません。本社の戦略がぐらつく、一貫していない、現地に対するサポートが足りない、それが失敗の全ての原因です。

 もちろん、未知の外国に進出するのですから、危険は満ち満ちています。経験の範囲で想定しますから、経験していない外国では想定外のことが頻繁に起こります。それに、どのように対応できるかは、本社の能力次第です。能力は、人材と資力にかかっています。盛田氏が資金集めに奔走したことは、前回にも触れましたが、人材集めにも全力を尽くしました。

 無名の町工場には、優秀な人材は入ってきません。そこで、大企業にいて、処遇に不満である優秀な人材を新聞広告で集める。出る釘を求む、などのスローガンで募集したところこれは大成功しました。また一流の広報活動の成果で会社がまだ小さいうちから、一番入りたい会社の上位にのしあがりました。それなりの人がいなければ、自分の力でグローバリゼーションをすることはできない、これは、そのときも、今でも事実です。

 ただ、人材はそのときと、今では全く違うでしょう。国際的に通用する日本のビジネスマンは、今は沢山います。また、若い人で、外国人に負けない経営能力を発揮できる人もいくらでもいます。また、人材の流動化も進んでいて、そのような人を外から自由に採用できます。問題はそのような人たちを使いこなせる経営陣か、トップが思い切って、若い人たちに会社の、そして日本の将来を託する度量があるか、ということです。

 戦後日本経済の成功は、戦争に協力した経済人を、ねこそぎ追放して、若い世代への道を開いたからだ、という人がいます。そこで、現在の日本経済の閉塞状態をつくり上げた責任者たち、即ち、60歳以上の経済人の発言権を、すべて奪ってしまったら、日本経済は奇跡の再復活をするのではないか、と思いますが、いかがでしょうか。もちろん、政治家もそうできたら、もっと良いです。

 ソニーは幸いにして、最初の時期は、他社から集めた人材で、そして興隆期には自ら育てた人材で、日本でもトップの国際企業になりました。すこしやりすぎて、外国人が社長になってしまいましたが、ここまでは盛田イズムが一気にもたらしたものでしょう。盛田氏のあとを継いだ大賀典雄氏、そしてそのあとの第二世代のチャンピオン出井伸之氏、そして現在と将来のソニーのグローバリゼーションは次回以降の報告にします。

著者プロフィール

郡山史郎

株式会社CEAFOM代表取締役社長

1935年鹿児島県生まれ。一橋大学経済学部卒。1959年ソニー入社

スイス、米国に市場開拓マネジャーとして通算12年滞在。米国大企業に転じて、日本代表、北アジア担当、複数の関連会社の社長を歴任。1981年にソニーに復帰し、取締役情報機器事業本部長、常務取締役経営戦略本部長、資材本部長、一般地域統括本部長など歴任。2004年株式会社CEAFOM創業。

国際大学、早稲田大学、一橋大学、九州大学など講義、講師多数。外国人記者クラブ、証券取引監視委員会など講演多数。著書、「ソニーが挑んだ復讐戦」。

ソニー創業者、井深大、盛田昭夫、大賀典雄の直属幹部として永年経営に参加し、社長賞4回の実績あり。現在、多くの企業に対し、経営全般、グローバリゼーション、事業企画などのテーマでアドバイスを行い、また、役員、幹部社員の研修講演なども行っている。


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