「理屈っぽい」「やる前から言い訳をする」「夢ばかりを語る」などといわれているが、それには理由がある。理由を理解すれば大きく飛躍することができる。
この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。
いよいよ「ゆとり世代」が職場にやってきました。少し不安に感じることはありませんか? 「理屈っぽい」「やる前から言い訳をする」「夢ばかりを語る」など、彼らに対する世間の評判はあまり好意的なものではありません。
しかし、果たして本当にそうなのでしょうか? 世界で活躍するプロゴルファー、海外で活躍する多くのサッカー選手も「ゆとり世代」です。身近なところでは、東北の復興に向けて額に汗をしながらがれきを撤去していたボランティアのメンバーの多くも「ゆとり世代」です。
この矛盾をどう考えればよいのでしょう? そこには、過去のやり方にとらわれずに、彼らの一人ひとりの特性を理解している親、先生、コーチの存在が大きく作用しています。つまり指導者の介在が彼らを大きく飛躍させる「きっかけ」になっているのです。
今回は、もはや職場のリーダーにとって不可欠となっている「ゆとり世代」を育成するためのポイントを紹介します。
「最近の若者は理屈っぽくなった」と言われています。かつてのように「やってみないと、分からない! まず、やってみろ!」というのは確かに正論ですが、彼らにとっては「まずアクセルを踏め! ブレーキはあとで教えるから!」と言われるのと同じくらい不安を抱えてしまうアドバイスのようです。こればかりは仕方ありません。教育と時代の産物です。
インタビューをすると、彼らにも「理屈」を大事にしたい理由があるようです。彼らは事前に不安を払拭しておきたいと言います。いわば、彼らにとって「理屈」は不安を払拭してくれるカンフル剤なのです。
例えば、「お客さまからお金を頂くのは申し訳ない」といった感覚を持つ若者も少なくありません。わたしのインタビューでは、新人のセールスパーソンの約半数が「お金を頂くこと」に少なからず抵抗を感じています。さて、いったいどうすればよいのでしょう?
「お金を頂くことは“商売の基本”なのだ」と説得したいところですが、これだけでは不十分。常識を前提とした説得は通用しません。常識をリセットして、彼らの目線に合わせることから始めたいところです。
「お金を払うかどうかはお客さまが決めている」といった、極めて当たり前の理屈を伝えた上で「では、お客さまの期待値を超えるための要件は?」と質問をしてみるのです。すると、彼らは自分の頭で考え始めます。このプロセスを経て、彼らは「より良い物を、より安く提供すること」といったビジネスの常識を理解できるようになります。ここまで来ると、「お金を頂くことが申し訳ない」と誤った考えはなくなります。
他にもあります。「元気な挨拶をしない」「営業マンなのにクロージングを恐がる」「自身の目標が未達成なのにヘラヘラしている」といったシーンも少なくありません。この時、常識で説教をするのではなく、やはり理屈で教えます。
「挨拶の目的は“よろしくお願いします”の気持ちを伝えること」「クロージングはお客さまの意思決定を支援するサービス」「目標は一人ひとりに分割された責任」など極めて当たり前の理屈を教えることが、彼らの成長を促すのです。
結論です。リーダーが留意すべき点は3つ。
(1)常識を前提とした説教は、リーダーの怠慢に過ぎないことを心得る。
(2)人を指導する立場になったら「言葉の定義」を考える習慣を持つ。(「仕事とは?」「真面目に頑張るとは?」「顧客志向とは?」など)
(3)あえて若者の「理屈っぽさ」に付き合う。目線を合わせるのもリーダーの役割。
経験を常識として語るのではなく、経験を理屈に翻訳して語ることも「ゆとり世代」を育成する鍵になっています。
「頑張って同期で一番になれよ」
わたしはこの激励をお勧めしません。なぜなら、彼らの関心はそこではないからです。むしろ、「頑張って、同期のために模範になれよ」の激励の方が彼らのやる気に火をつけます。なぜなら、彼らの関心は「他人に勝つこと」ではなく「他人への貢献を通じて、感謝されること」だからです。つまり、彼らは「一番の出世頭」になること以上に「君がいてくれて良かった」と言われるほうが、喜びを感じやすい世代なのです。
しかし、企業の報酬システムは「競争」志向がベースになっています。言い換えると、昇給、昇進、表彰などの報酬は全て競争に勝った者に対するご褒美です。だからこそ、現場を預かるリーダーは、日常の中で「貢献欲求」を刺激する仕掛けやコミュニケーションを行う必要があるのです。
例えば、縁の下を支える内勤スタッフを対象とした職場の「ミニ表彰」、一人ひとりへの感謝の気持ちを記したメッセージカードを投票する「サンクスキャンペーン」、営業支店で行われる販売キャンペーンを個人対抗戦から「チーム対抗戦」に変える……など、貢献を称える仕掛けを企てることもリーダーの役割になっています。
その時のリーダーの留意点は2つ。
(1)競争を否定しない。チーム対抗にするなど貢献欲求を刺激する競争を設計する。
(2)縁の下の力持ちにキチンとスポットライトをあてるため、プロセスに目を凝らす。
指導者は、ビジネスパーソンとして「実践のスキル」を持ちながらも、小学校の先生のような「チームビルディング」を行う感性も必要になってきています。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授