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» 2013年02月22日 08時00分 公開

「One Sony」実現へ、強いIT部門づくりに挑むCIO「等身大のCIO」ガートナー重富俊二の企業訪問記(2/2 ページ)

[聞き手:重富俊二(ガートナー ジャパン)、文:大井明子,ITmedia]
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IT部門には、今がチャンス

 ――CIOの方々と話をしていると、ビジネス側のトップとのコミュニケーションがうまくいかないという悩みをよく聞くが、ソニーではどうか?

ソニーの堺氏(左)、ガートナーの重富氏

 ビジネス部門から会議に呼ばれることは多く、議論は頻繁に行っている。特に今は、平井一夫社長が組織や国の壁を越えてソニーグループ一丸となって進む「One Sony」を掲げており、情報システム部門にとっても追い風になっているように思う。

 ――とはいえ、努力なしにビジネス側とのコミュニケーションが円滑に進んでいるわけではないと思う。どんな工夫をしているか?

 確かに、何もしなければ会議などには呼ばれないので、IT部門からも働きかけをしている。例えば「現在は欧州と米国のシステムは別々だが、本来同じでいいはず。別々だからコストが高いのだ」など、相手にしてみればカチンとくるようなことをわざと投げかけて議論したりもする。複数組織や複数国をまたいだ連携が必要な課題を指摘したりすることも多い。絶えずビジネス側のトップを巻き込む工夫をしている。

 ――ソニーは非常に個性的なリーダーが多く、組織横断で横串の活動が必要な情報システム部門には苦労が多いと思うが?

 確かにその通り。非常にユニークな人が多いので大変だ(笑)。しかし幸か不幸か、今は全社的にコスト抑制の意識が強く、情報システム部門への期待も高いように感じる。右肩上がりのときには、プロセスやシステムの標準化といったわれわれの提案にも、なかなか耳を貸してもらえないが、今はそんなわがままも言っていられないほど厳しい。われわれにとって、今がチャンスだと思う。逆に、今変えないと変えるチャンスは今後来ないかもしれないという意識を持っている。

 ただその一方で、もしだれもが(組織横断で共通化を推し進める)情報システム部門の言うことを素直に聞くようになったら、わたしは仕事がしやすくなるだろうが、それはソニーがソニーらしさを失うことを意味するので心境としては複雑だ。

企業のITが強くならないと、業界全体が強くはならない

 ――仕事をするうえで、「これだけは大切にしたい」と考えている価値にはどんなものがあるか?

 「今日できたことに満足せず、常に改革をする」ことだ。わたしはこれまで「新しいことに挑戦しなくても決められたプロセスを正しくこなすことに価値がある」という組織に身を置いたことがない。決して現状に満足せず、常に改革を続けるという気持ちを持ち続けるべきだというのが信条だ。

 もうひとつ重視しているのが「リスクテイク(リスクを取る)」だ。最近の若い人は非常に頭がいいが、あまりリスクテイクをしない。「どうしましょう?」と相談に来て、「例えばこんなやり方もある」と、こちらは参考のつもりで言ったことをそのままやって、失敗すると「堺さんが言うとおりにやったのに」と責任逃れをしたりする。自分で考え、自分でリスクを負うことのできる人を育てたい。

 ――ソニーのようなグローバル企業でITに携わることのおもしろさは、どんなところにあるか?

 世界を見ながら改革を進め、競合にどう勝つかを考えていくところに醍醐味がある。日本にいて日本のことだけを考えるのとは、ダイナミックさが全く違う。他社のまねをするのではなく、他社を超える新しいプロセスをソニーで作り出そうという人と一緒にやっていきたい。

 ソニーは中国やインドにも開発拠点を持ち、それぞれ現地でも新入社員を採用しているが、みんなソニーに入ってグローバルな仕事ができることにワクワクし、目をキラキラ輝かせている。日本でも、そういう気迫を持った人たちと一緒に仕事がしたいと思う。

 中国ではある若い社員に、「日本から中国に仕事を持ってきてもらえるのは非常にありがたいが、日本人としてはどう感じるか?」と聞かれた。建前としては、企業人としてコストの低いところに進出するのは当たり前だと答えたが、「日本人としてはくやしくて仕方がない」という本音も正直に伝えた。

 ――企業のITに携わる人に向けてメッセージは?

 企業のITにもっと元気になってほしい。技術は外部パートナー任せ、構築はコストの安い中国やインドに、ビジネス要件はビジネス側に任せっきりというのではなく、もっと自分たちが主役になって活躍できる職場のはず。企業のITが強くならないと、IT業界全体が強くならないと思う。ので、まずはわれわれが変わらないといけない。

対談を終えて

 堺氏との対談では、技術力・テクノロジーへの深い「愛着」と強い「こだわり」を一貫して感じた。時代の変化に応じてIT部門の役割を拡大・変化させることは必要だが、このような「原点」を忘れてしまっては、ITの存在意義がないと改めて考えさせられた。

 記事には掲載されていないが、堺氏はスポーツを見ることも自らやることも大好きだと言われていた。自らの技術を磨いて、戦いに臨むことがITと共通しているのではないか、とフッと考えた。今年は念願の東京マラソンに参加されるそうで、その成果をお聞きすることを楽しみにしている。

プロフィール

重富 俊二 (Shunji Shigetomi)

ガートナー ジャパン エグゼクティブ プログラム バイス プレジデント エグゼクティブ パートナー

2011年 12月ガートナー ジャパン入社。CIO、IT責任者向けメンバーシップ事業「エグゼクティブ プログラム(EXP)」の統括責任者を務める。EXPでは、CIOがより効果的に情報システム部門を統率し、戦略的にITを活用するための情報提供、アドバイスやCIO同士での交流の場を提供している。

ガートナー ジャパン入社以前は、1978年 藤沢薬品工業入社。同社にて、経理部、経営企画部等を経て、2003年にIT企画部長。2005年アステラス製薬発足時にはシステム統合を統括し、情報システム本部・企画部長。2007年 組織改変により社長直轄組織であるコーポレートIT部長に就任した。

早稲田大学工学修士(経営工学)卒業


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