部下を惹きつけるプレイングマネジャーとは新時代のプレイングマネジャー育成法(2/2 ページ)

» 2013年09月04日 08時00分 公開
[上林周平(シェイク),ITmedia]
前のページへ 1|2       

人を惹きつける前提として、そもそも自分は賛同しているのかどうか

 そつがなく周りから決して悪くは言われない40代のプレイングマネジャーBさんがいた。周りのメンバーが「ビジョンは掲げているが、Bさんは本当にマネジャーをやりたいのですか?」と質問すると、言葉が止まってしまった。「やらねばならない」という思いで日々行動し、そしてビジョンも掲げてみたが、自ら「したい」というような思いが全く含まれておらず、何も言い返すことができなくなっていた。

 このような人は多い。目指すべきビジョンを書くときに与えられた目標を書いたり、どこの部署でも通用しそうな標語のようなものを書いたりするような人だ。責任感が強く、まじめな人に多い傾向である。しかし、「やらねばならない」で描いたビジョンは、周りだけでなく自分自身を動機づけることも難しい。

 野田智義・金井壽宏著「リーダーシップの旅」では、リーダーになっていくプロセスには3つの段階があり「"リード・ザ・セルフ(自らをリードする)"を起点とし、"リード・ザ・ピープル(人々をリードする)"、さらには"リード・ザ・ソサエティ(社会をリードする)」"へと段階を踏んで変化していく」とある。目指すべき方向性であるビジョンに対して、まず自分が前に進んでいると、いつの間にか振り返ると人がついてきているという状態なのだ。人が動きたいか動きたくないかの前に、まずは自分が動きたいと思い、前に進むことこそが、リーダーシップを発揮する上で大事なのである。

やらねばならないビジョンではなく、自分が成し遂げたいビジョンを描く

 「やらねばならない」ではないビジョンを描くためには、以下2つが大事である。

 まず1つ目としては、自らが何を大事にして仕事をしているのかを認識し、それにそったビジョンであるかどうかを考えて欲しい。例えば、「創造(新たなものを創りだす)」を大事にして仕事をしている人であるならば、そのビジョンには「創造」ができる可能性があるのかということである。また、「人とのつながり」を大事にして仕事をしている人であるならば、そのビジョンには、部署内外の人とのつながりが促進されるような内容になっているのかということだ。

 ビジョンを描くために、自ら働く上で、マネジャーとして大事にしている信念を見つめてほしい。信念が含まれると、ビジョンに自分の色が出てくるだろう。

 2つ目としては、自らの役割や制約条件にとらわれ過ぎずに「自分自身はこの部署全体で、どのような価値を提供していきたいのか」「自分自身は、どのような組織状態で働きたいと思っているのか」を考えてほしい。「やらねばならない」をすべて外してみた時に、自分が本当に「したい」ことが現れる。それを見つめることで、改めて自組織のビジョンを見てほしい。そして、自分自身が動きたいビジョン、すなわち、自分が成し遂げたいビジョンを描いてほしい。

 前回と今回を通じて、プレイングマネジャーとして現状を打破するために、ビジョンを描く3つのポイントについて述べた。次回は、これらのビジョンをもとに「やるべきこととやらないことを決断する」について詳しく考えていきたい。

著者プロフィール

上林 周平

株式会社シェイク 取締役

大阪大学人間科学部卒。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。主に業務変革などのコンサルティング業務に携わる。2002年シェイク入社。各種コンサルティング業務と並行し、人材育成事業の立ち上げに従事。その後、商品開発責任者として、新入社員から若手・中堅層、管理職層までの各種育成プログラムを開発。また、2004年からはファシリテーターとして登壇し、新入社員から若手・中堅層、管理職層まで育成に携わった人数は1万人を超える。2011年9月より取締役就任。

連載記事「新時代のプレイングマネジャー育成法」をeBook(電子書籍)にまとめた「仕事の減らし方 〜 新時代のプレイングマネジャー 〜」を発売。詳細はこちら


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆