最後に、「取り組まない仕事」を見つけ、推進して方法として、「(その業務を)やめる」「自組織内で代替する」「自組織外で代替する」の観点から現状の仕事を見つめてほしい。
(1)施策そのものをやめる
例えば、風土を良くすることを目的に始めた部内の会議が、風土が良くなった後も何となく続いており形骸化しているようなものはないか。マネジャーとしては、目的に対して効果が低い場合、その施策をやめるという決断をすることが大事である。
(2)業務プロセスの一部をやめる
例えば、資料提出者に対して、個別に期日ごとに手厚くリマインドメールを送っている仕事があった。この業務の開始時はこのリマインドも効果があったようだが、提出者の意識が高まってきたその段階では、リマインドメールが無くなったとしても大きな問題ではないという状況であった。このような昔から続いている手厚いプロセスなどはないだろうか。マネジャーとしては、かかる時間に対して価値が少ない業務プロセスを無くすという決断をすることも大事である。
(3)人にお願いすることで代替する
例えば、自分がやっている業務を部下に任せることができないか。そのためには、日々部下の成長を促し、後継者を作る意志を持つ必要がある。また、前回に述べた「部下にやるべきことを伝えるのではなく、部下の力を引き出すビジョンであるかどうか」という観点も大事である。
(4)プロセスを変更することで代替する
例えば、先ほどの自動車販売の店長のケースで言うと、「値引き権限を部下にすべて渡し、店長への確認プロセスをなくす。一方で、値引きルールの明確化と教育を徹底する」というように、違う打ち手で、プロセスを変更できるようなものはないか。マネジャーとしては、既存のやり方にとらわれずに考えることが大事である。
(5)横(他部署)へアプローチする
例えば、ある部署からの仕事を受け取り、自部署で作業を行う際に、前の部署からの指示書やアウトプットを少し変えるだけで、自部署が楽になるというようなものはないか。マネジャーとしては、他部署に依頼をしてプロセスを変えてもらうことで、自部署の効率化を図るような動きが大事である。
(6)上(上層部)へアプローチする
例えば、新規顧客開拓を重視していた時の目標や施策が、既存顧客重視に戦略変更した後も残っている場合のように、過去からの経緯で残っているだけで変更しても問題ないようなものはないか。マネジャーとしては、その目標や施策は本当に必要なのかと、上位者に働きかけることが大事である。
「仕事量が減るのを待つ」「人が増えるのを待つ」ではなく、広い視野と一歩踏み出す勇気と覚悟を持って、自ら周りに働きかける。それがマネジャーの仕事として大事なことである。そして、それを実現するためには、前回までの連載で述べた、「自らを動かし、人を動かすことが出来るビジョンの存在」が重要なのだ。
さて今回は、「プレイングマネジャーが身につけるべき仕事の減らし方」と題して、全般的に述べてきたが、次回はその中で、人を育てるということに注力して考えていきたい。
上林 周平
株式会社シェイク 取締役
大阪大学人間科学部卒。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。主に業務変革などのコンサルティング業務に携わる。2002年シェイク入社。各種コンサルティング業務と並行し、人材育成事業の立ち上げに従事。その後、商品開発責任者として、新入社員から若手・中堅層、管理職層までの各種育成プログラムを開発。また、2004年からはファシリテーターとして登壇し、新入社員から若手・中堅層、管理職層まで育成に携わった人数は1万人を超える。2011年9月より取締役就任。
連載記事「新時代のプレイングマネジャー育成法」をeBook(電子書籍)にまとめた「仕事の減らし方 〜 新時代のプレイングマネジャー 〜」を発売。詳細はこちら。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授