クワガタの飼育になくてはならないのが菌糸ビンである。菌糸ビンは、プラスチックのビンに木くずを詰めて、キノコの菌を植菌したもの。エノキやエリンギなどの食用キノコを栽培する菌糸ビンをクワガタ用に改良したものである。オオクワガタの飼育ステージは、ペアリング、産卵割出、幼虫飼育、蛹化、成虫となる。
柴崎氏は、「自然界では成虫になるまでに2年かかるが、人工飼育により1年で成虫に羽化させることができる。ペアリングに約1週間、メスを少し大きめの産卵セットに移して約6週間かけて産卵。産卵木や産卵ブロックに幼虫が出てくるので、菌糸ビンに移す。途中で2〜3回、菌糸ビンを変えて秋から翌春まで飼育すると、春には蛹化し、羽化して成虫になる」と話す。
「自宅にはブリードルームがあり、成虫と幼虫それぞれを単体で管理している。部屋は24時間365日エアコンを使い、24度前後に保っている。玄関の涼しい場所には、アクアリウムをもじってクワリウムという観賞用のケースを作り飾っている」と柴崎氏。またエコシステムとして、オオクワガタの幼虫が食べ残した菌糸ビンの中身を土に返すために、庭の一角に捨て場所を作り、カブトムシの幼虫を放して土に返している。その傍らでは台場クヌギも育てている。
「小学生のころクワガタを交尾させて、幼虫、サナギ、成虫に羽化させたいと思っていたが、当時は情報が全くなかった。大人になって、インターネットや専門誌のお蔭で最新の情報が手に入る。最新の研究成果として、ヒラタクワガタがどのように分布を拡大させてきたかを遺伝子解析して調べている研究者がいることを知った」(柴崎氏)
ヒラタクワガタは、当初は東南アジアに生息していたが、数百万年かけて生息地を北上させている。日本でも本土と離島で種類の違うヒラタクワガタが生息している。柴崎氏は、「こういった話を聞くと、子どもの昆虫採集の域を超え、悠久の歴史と、幾多の絶滅の危機を乗り越えてきたクワガタに男のロマンを感じる」と話している。
実は、オオクワガタは、絶滅危惧種に指定されている。「飼育品は出回っているが、野生の個体は少ない。北海道から九州までの広い地域で捕獲できるが、昔から産地と呼ばれている地域を"濃い地域"と呼んでいる。例えば、能勢(大阪)や筑後川流域(九州)など。東日本のメッカと呼ばれているのは、韮崎(山梨)である」と柴崎氏。
クワガタと出会うことで自身のビジネスの幅も広げ、書籍発刊という新たなステージも生まれた。子どもの頃の夢を思い出し、大人になった今だからこそチャレンジしてみてはいかがだろうか。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授